BEVには結構な数のデメリットが存在する。充電時間やバッテリーの価格などなど、これが普及しきれない要因のひとつだ。
グローバルで一気に進むBEV(バッテリー電気車)シフトのトレンド。だが、BEVが普及するためには課題がある。これは、いまに始まったことではなく、長年に渡る技術的な課題である。具体的には、大きく3つの課題がある。【写真】スバルが公開した1000馬力超えの「怪物EV」 ひとつ目は、航続距離だ。ガソリン車、ディーゼル車、またハイブリッド車と比べると、BEVは満充電で走行できる距離が短いとされてきた。解決策としては、電池容量を大きくすることだが、この手法をまずテスラが用いて、その後に欧米や中国のメーカーも高級モデルでの電池容量の大型化を進めてきた。 ふたつ目は、充電時間だ。ガソリンやディーゼル燃料ならばガソリンスタンドで数分間で給油が済むが、BEVでは直流の高電力による急速充電でも満充電まで30分以上かかり、電池容量が大きくならば充電時間も当然伸びることになるという背反性がある。また、家庭や会社にある交流充電では、一般的な100Vから200Vへ設備を改良しても、満充電までひと晩以上かかってしまう。 3つ目は、コストだ。BEVはガソリン車、ディーゼル車、またハイブリッド車に比べると部品点数が少ないが、大物部材であるモーター、インバーターなどの制御機器、そしてなんといっても電池のコストがまだまだ高いのが現状だ。
バッテリーにはさまざまな素材が使用されており、その素材が高いが故に車両価格にもそれが反映されてしまっている。数十年前よりは圧倒的に安くはなったが、今後バッテリーの低価格化がひとつの焦点になりそうだ。
こうしてBEVの課題を挙げてみると、やはり大きな要素となっているのは電池であることが分かる。その電池で、今後10年から20年ほど先までBEV向けの主流になると言われているのが、リチウムイオン電池だ。携帯電話などでも利用されているが、一般的にBEV向けは大型リチウムイオン電池という区分となる。 リチウムイオン電池の構造は、正極と負極の間にセパレーターという仕切り素材があり、それらを電解液という液体で満たしている。正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電に伴う電流が生まれる仕組みだ。 ただし、正極、負極それぞれに使う材料にはさまざまな種類があり、その組み合わせよって電池の性能にも差が生じる。また、電池の形状も円筒型、角型、パウチ型など複数の種類がある。一般的には、電池そのものをセルと呼び、複数のセルをまとめたものがモジュール、そしてモジュールを組み合わせたものを電池パックと呼ぶ。 こうしたリチウムイオン二次電池のコストの詳細について、一部の電池メーカーや自動車メーカーが学会などでデータを公表している。それによると、とくにコストがかかるのが正極材だ。なかでも生産量が制限されているコバルトがコスト高に要因となると言われている。 つまり、今後BEVの普及拡大を目指すためには、資源を採取するうえでの制約が少なく、また持続的に入手でき、さらに耐久性が高い素材をより安いコストで採用することが重視される。そのため、近年はトヨタを始めとして大手自動車メーカーは電池メーカーや素材メーカーと共同で、たとえばコバルトレスのリチウムイオン電池の研究開発を促進しているところだ。 電池の技術革新が、BEV普及のカギであることは間違いない。
桃田健史
最終更新:WEB CARTOP