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ハプティクス(haptics)とは? PS5やiPhoneにも使われている技術のカラクリ
ハプティクス(haptics)と呼ばれる技術を知っているでしょうか。これは、ゲームのコントローラーのように、利用者に振動を与え「実際にモノに触れているような感触」をフィードバックする技術です。現在は、コロナ過において人々が“触る”ことに対して敏感になっている中、ハプティクスの派生技術である「空中ハプティクス(超音波ハプティクス)」にも注目が集まっています。この技術を使えば、空中に感触のある立体(たとえば、スイッチやボタン)を作りだせるため、接触をなるべく減らしたいコロナ禍の課題を解決する技術となるかもしれません。ここでは、ハプティクス技術がどのような仕組みなのか、どのように活用されているかを解説します。
横井麻美
横井麻美
コーンズテクノロジー 電子デバイス営業部 インタラクティブソリューションチーム
<目次>
- ハプティクスとは
- ハプティクスの活躍領域
- ハプティクス事例:ゲーム機、体験型シアター
- 超音波ハプティクスとは
- 超音波ハプティクスの活躍領域
- 超音波ハプティクス事例(1):自動車業界
- 超音波ハプティクス事例(2):広告業界
ハプティクスとは
ハプティクスとは、人に振動や動きを与えることにより、触感のフィードバックを得られるようにする技術です。具体的にどのような技術なのかをイメージしやすいよう、身近な例を挙げると、たとえば、ハプティクス技術はiPhoneのホームボタンにも利用されています。 iPhoneのホームボタンを押したとき、実際には物理的なボタンが存在するわけではないにも関わらず、ユーザーが指でボタンを押し込んでいるような感触を得ることができます。これは、利用者に感触のフィードバックを与えるハプティクス技術によるものなのです。 このように、すでに身近なところで活用が進むハプティクス技術ですが、どのような仕組みになっているのでしょうか。 ハプティクス技術は、一般的に「接触型」が主流となっています。実際に触れられている部分に振動を与え、リアルな感触をもたらすという技術自体は、すでに数十年前から活用されていました。 たとえば、携帯電話の振動に多く利用されてきた「偏心モーター型(モーターの軸に重心の偏った重りをつけ、回転させることで振動を生む技術)」や、より早く複雑なハプティクスを実現した「ピエゾ型(電圧をかけることにより屈曲すると伸び縮みする圧電素材)」などがあります。
ハプティクスの活躍領域
ハプティクスは、さまざまな分野での活躍が期待されています。感触を加えることで利用者を楽しませるコンテンツが登場することが予想されます。エンターテインメント領域における活用は、今後もさらに広がっていくことでしょう。 また、5Gなどの高速通信網を利用すれば、双方向の対話ができるxR(VR、AR、MRなどの総称を示す)についても、将来的に触感が加わることにより離れた人と会話ができるだけでなく、握手やハイタッチなども可能とする、真の意味でのxRが実現できるでしょう。 それだけでなく、ロボットハンドを利用した遠隔医療などにおけるハプティクス技術を活用も検討されています。単なる遠隔操作ではなく、操作者へ触感フィードバックを与えることで、より正確な動作につながるなど、医療ITの領域でも活躍が期待されています。
ハプティクス事例:ゲーム機、体験型シアター
すでに登場しているハプティクスの活用事例としては、ゲーム機のコントローラーがあります。ハプティクス技術を活用することで、たとえばゲームのプレイ中に起こる衝撃を表現することができ、プレイヤーは没入感を得ることができます。具体的には、PlayStation 5(PS5/プレイステーション5)にハプティクスが活用されています。 また、米国MediaMation社が開発し、ソニービジネスソリューションが展開する、体験型シアター「MX4D」にもハプティクス技術が利用されています。 MX4Dは、映画のシーンに合わせて、客席のシートが動いたり、風や香り、振動などで視聴者の五感を刺激してくれる視聴サービスです。映画シーンに合わせて表現される振動や衝撃を再現するためにハプティクスが活用されています。
超音波ハプティクスとは
「接触」を前提とする一般的なハプティクス技術だけでなく、“ふれずに感触を得る”ことを実現した革新的な技術も存在します。それが、英国Ultraleap社が特許を持つ「空中ハプティクス(超音波ハプティクス)」と呼ばれる技術です。 これは、何もない空間上に、目に見えないバーチャルの3D形状や感触をつくり出すことを可能にする技術です。 この超音波ハプティクスは、どのような仕組みになっているのでしょうか。空中ハプティクスでは、超音波を発するトランスデューサー(スピーカー)と呼ばれる装置をアレイ状に並べ、超音波の位相をコントロールすることで音圧を集約させ、手に振動を与え触感を伝えます。 皮膚を振動させることにより触感を生成するため、触れる人が触感を風のように感じる場合もありますが、形状自体ははっきり認識することが可能です。超音波を集約した焦点位置を高速に動かすことにより、単純な点や線だけではなく、ある程度複雑な3D形状の表現も実現可能なのです。【次ページ】超音波ハプティクスの活躍領域、「自動車業界」「広告業界」の事例もまるごと解説
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