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新型コロナウイルスに襲われた世界の隙を突き、ハッカーたちが活発に動き始めた

新型コロナウイルスに襲われた世界の隙を突き、ハッカーたちが活発に動き始めた

新型コロナウイルスは世界経済のみならず人々の暮らしや健康に影響を与え、毎日の働き方や人との接し方を変えつつある。しかし、人々の健康を脅かすウイルスの恐怖に加え、これらの急激な変化は新たな環境をも生み出している。ネット上ではハッキングや詐欺行為、スパム攻撃が猛威を振るっているのだ。

新型コロナウイルスに対する恐怖心や混乱につけ込むフィッシング詐欺メールは、1月に出回り始めてから増加の一途をたどっている。例えば、新型コロナウイルス検査の主要なハブでもあるチェコのブルノ大学病院が3月初めにランサムウェア攻撃を受け、医療業務を妨害されたり、手術の延期を強いられたりする事件があった。

高度な技術をもち、国家レヴェルの機密データを狙うハッカーたちまでが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を利用した罠を仕掛けてマルウェアを拡散させている。いまやあらゆるサイバー攻撃の条件が揃ってしまったのだ。


特集・新型コロナウイルスと「世界」の闘い

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、世界をどう変えるのか? いま知っておくべきこと、研究開発のいま、社会や経済への影響など、『WIRED』ならではの切り口から最新情報をお届けする。

新型コロナウイルスに襲われた世界の隙を突き、ハッカーたちが活発に動き始めた


パンデミックでセキュリティは無防備な状態に

いま、かつてないほど多くの人が在宅勤務を余儀なくされている。だが、家庭におけるネットワーク環境の安全性は、一般的にオフィスよりも低い。それにいまは、在宅で安全に業務を続けられない重要インフラの現場や極秘情報を扱う職場でさえ、オフィスには最小限の人員しかいない。

しかも、誰もが概して注意散漫になっていることから、無防備な状態に陥りがちだ。また、人はストレスを受けたり気が散ったりしていると、あくどい詐欺や策略に引っかかりやすくなる。

「ネット環境の脆弱性が緊急事態を招いているという意味において、考えうる限り最大の世界的な危機と言えます」と、サイバーセキュリティの研究者でコンサルタントでもあるルカシュ・オレイニクは言う。彼はパンデミックに起因するデジタルセキュリティのリスク分析を専門としており、次のように指摘する。

「現状でもかなり多くの問題が発生しています。さらにトラブルが重なれば、事態はますます悪化するでしょう。サイバー攻撃が引き起こす最悪の結果として、例えば医療施設などで危機対応に遅れが出ることなどが考えられます」

混乱のさなかにある医療機関をハッカーが狙う

それこそまさに、チェコのブルノ大学病院で起きていることだ。チェコの国家サイバーセキュリティセンターと治安当局は、いまだにこの病院のデジタルサーヴィス機能を完全に復旧できていない。

病院を狙ったランサムウェア攻撃は珍しくない。院内の機能を一刻も早く立て直す必要があることから、病院は金銭の要求にあっさり応じるはずだとの期待が犯人側にあるからだ。患者の健康と安全は、こうしたサイバー攻撃による潜在的な脅威に常に晒されている。

ましてやパンデミックによって世界中の医療システムに過剰な負荷がかかっているいま、その恐怖はとりわけ大きい。サイバーセキュリティ企業のCovewareとマルウェア対策ソフトの開発企業Emsisoftは3月18日、パンデミックが終息するまでの期間、医療機関に対するランサムウェア対策サーヴィスの無料提供を開始した。いまの状態で医療機関がサイバー攻撃を受ければ、被害はコンピューターのなかにとどまらず、現実の世界で物理的な犠牲を伴うだろうと両社は警告している。

在宅勤務を狙う“詐欺師”たち

こうしている間にも、パンデミックに乗じたフィッシングサイトや詐欺サイトは、ネット上で爆発的に増え続けている。毎日数千もの不審なドメインが新たに出現しているという報告もある。