「Zoom」AI翻訳企業買収 対「Teams 2.0」、ビデオ会議2大覇者の進化のゆくえ |ビジネス+IT

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    「Zoom」AI翻訳企業買収 対「Teams 2.0」、ビデオ会議2大覇者の進化のゆくえ

    「コロナ禍」でリモートワークが日常になる中、ビデオ会議/Web会議市場は2020年に急成長した。中でも「Zoom」と「Microsoft Teams」(以下、Teams)は、それぞれの強みを生かしてユーザー数を大幅に伸ばし、混沌とした同市場の戦場から「2大覇者」として浮き上がってきている。今後も成長が見込まれるビデオ会議/Web会議市場でしのぎを削る2大企業の動きに迫る。

    執筆:フリーランスライター 山本直子、編集:岡 徳之

    執筆:フリーランスライター 山本直子、編集:岡 徳之

    山本直子慶応義塾大学文学部卒。日本、中国、マレーシア、シンガポールで証券アナリスト、ライター、編集者として勤務した後、2004年よりオランダ在住。オランダの生活・教育・イノベーションを雑誌やネット、ラジオなどで紹介する。著書に『週末は、Niksen。』(大和出版)。Twitter @pindatwit

    <目次>
    1. Zoomはスタートアップの買収と支援でエコシステム構築
    2. Microsoft Teams 2.0へ、Windows 11に標準搭載
    3. 伸びるビデオ会議/Web会議市場、ZoomがシェアNo.1
    4. 足元も好調、Teamsが追い上げ
    5. 2021年も成長持続、勝敗の決め手は?

    Zoomはスタートアップの買収と支援でエコシステム構築

     「Zoom」を開発・運営するZoom Video Communications(以下、Zoom)は6月29日、ドイツの「Karlsruhe Information Technology Solutions (Kites)」を買収することで最終合意に至ったと発表した。 Kitesは2015年に独カールスルーエ工科大学の研究者により設立されたスタートアップ企業で、機械学習翻訳の開発に携わっている。12人から成る同社の研究チームがドイツからZoomを支援し、ビデオ会議に多言語翻訳機能を提供する計画だ。 同機能がZoomアプリケーションに搭載されれば、多言語間のシームレスなコミュニケーションが可能になる。 たとえば、日本人とアメリカ人がZoomを通じて会話をする際、それぞれが日本語と英語で話をすると、相手の画面にはそれぞれ英語字幕、日本語字幕がリアルタイムで表示されることになる。 Zoomの商品・エンジニアリング担当プレジデントVelchamy Sankarlingam氏は、「言語、場所、その他の障壁に関係なく、コラボレーションを摩擦のないものにするという私たちの使命により、KitesのチームがZoomにぴったり合うと確信している」とコメント。 ZoomはKitesに積極的に投資する意向を示しており、将来的にはドイツにR&Dセンターを立ち上げ、機械学習翻訳に関する研究開発を強化する構えだ。 Zoomはこの4月にも「Zoom Apps Fund」という1億ドル(約110億円)のベンチャーファンドを立ち上げたばかり。Zoomに付随する便利なサービスを生み出すため、Zoomと連携できるソフトウエアのスタートアップに25万~250万ドルを初期投資するというもので、「Zoomのエコシステム」構築を進める。

    Microsoft Teams 2.0へ、Windows 11に標準搭載

     一方、マイクロソフトもTeamsのアプリ開発を加速させるための計画を進めている。 Teamsエンジニアリング部門のコーポレート・バイス・プレジデント、Rish Tandon氏は6月24日、「Windows11」の発表とともに「Twitter」で、Teamsがアプリ作成のためのフレームワークを「Electron」から「Edge Webview2」に移行していることを明らかにした。「Window11」ではこのEdge Webview2を用いたTeamsを標準搭載し、タスクバーにこれを統合している。 マイクロソフト製品に詳しいTom Arbuthnot氏によれば、Edge Webview2では、「JavaScript」「HTML」「CSS」などのWeb技術を使ったウェブ表示機能や実行などをコンポーネント化してネイティブアプリに埋め込むことができるほか、そのアップデートにも対応しやすくなるという。 そのため、「Electron」を使っていたときよりもアプリ開発がやりやすくなるほか、ユーザーがダウンロードするアプリのサイズも小さくなる。 また、ElectronベースのTeamsはレンダリング(描画処理)に多大なメモリを消費し、他のアプリを同時に使っている場合はパフォーマンスが低下するという弊害があったが、Edge Webview2を使った「Teams2.0」ではこれが解決され、メモリ使用量が半減するという。「Teamsは重い」問題に真っ向から向き合ったわけだ。 さらに、Electronは外部のオープンソースプロジェクトだが、Edge Webview2はマイクロソフトの管理下にあるため、マイクロソフトはTeamsのために使われるコンポーネントの開発をより細かくコントロールできるようになるほか、これまで変更できなかった領域のパフォーマンスと機能を向上させることができるという利点がある。 つまり、Edge Webview2への移行はアプリ開発者側にとってもユーザーにとっても利便性が高まり、パフォーマンスも改善されるということになる。 近い将来、「Windows10」向けにもEdge Webview2ベースの「Teams 2.0」が導入されると見られており、進化したTeamsが今後一気に機能を充実させ、個人ユーザーの間に広まる可能性は高い。【次ページ】伸びるビデオ会議/Web会議市場、ZoomがシェアNo.1

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