筆者の連載「西川善司の大画面☆マニア」は、今年で連載18年を突破したAV Watchの長寿連載だが、他誌の同系連載では見られない変わった実測値を公開している。
最近でいえば、カラースペクトラム計測値だ。これは2017年から始めたもので、テレビ製品の色再現性の目安情報として採り入れた。表示映像をデジカメ撮影した写真を示している同種記事は多いが、示された写真は実質的にsRGB色空間に落ち込んでしまうのと、カメラ自体の画作り特性で見映えが変わってしまうので、あくまで「雰囲気」しか伝えることができない。
大画面☆マニアでもいくつかのリファレンス写真を示してはいるが、雰囲気を伝えるだけで、その写真を評価に用いることはない。ちなみに「二人の美女がGT-Rの座席に座っているリファレンス写真」は、2012年からお二人の許可を取得して使い続けている。お二人は今も変わらぬ美しさなので心配は無用だ。
カラースペクトラムの測定値例計測系のネタで最も長いのは、2010年から始めた入力遅延計測だ。
初回は、東芝のCELLレグザ「55X2」の回(第136回参照)だった。入力遅延の計測を始めたのは、筆者周辺から「ゲームに適したテレビはどれか教えてください」という質問が多くなったことがきっかけだった。確かに、この頃から、業界においても「ゲームプレイの天敵は入力遅延だ」という認知が広がり、意識の高いメーカー達が「入力遅延の低減」に取り組み始めた頃である。
測定を行なうにあたっては、HDMI分配器と入力遅延の公称値を公開しているリファレンステレビが必要になったのだが、当時から(そして今も)、その公称値を公開している東芝レグザに協力を頂くことになった。
ちなみに2010年の最初期は「19RE1」(1,366×768ドット/公称入力遅延2.6ms)、2011年からは「26ZP2」(1,920×1,080ドット/公称入力遅延3.0ms)を比較対象テレビとして採用してきた。約9年間、26ZP2を使い続けてきたわけだが、そろそろ4K映像入力時の遅延計測を基準とすべきではないか、と思い始めたのだ。
リファレンス機と測定対象のテレビを並べて測定するこの方式は、実質的に相対比較であるため、どうしてもリファレンス機側の入力遅延の公称値の公開が必要要件となる。そして、リファレンス機が大きいと測定時の機材の取り回しが不便であるため、なるべく画面サイズの小さいモデルが望ましい。
リファレンス機(写真右)と、測定対象のテレビ(写真左)を並べて測定するこの2つの要件のうち、「入力遅延の公称値の公表」に応じてもらえたのは今回も東芝だけ。国内テレビメーカーに限らず、海外のゲーミングモニターのメーカーにもお願いしてみたのだが、返答は全て「非公開とさせてください」であった。
となると、今回も東芝レグザにするか、という流れになりそうだったのだが、最近の大画面☆マニアでも取り上げている通り「4Kテレビの最小サイズである40型は絶滅危惧種」で、これは東芝レグザも同様だ。測定リファレンス機として、43型オーバーは大きすぎるとして断念した。
そんな流れの中で、周囲から受けたアドバイスが「スタンドアローンで使えるラグテスターを使ってみたらどうか?」というものだった。
調べて見ると、欧米のメディアの一部で採用している例もあるようで、なかなか良さそうな手応え。まぁ、実際、これまでの測定方法では行き詰まりなことが明確となったので、これ以外に選択肢がなくなったのも事実。そんなわけで導入に踏み切ることとした。
今回の「西川善司の大画面☆マニア」は、番外編としてこのラグテスターを紹介してみたい。