7月に発売された「Leitz Phone 1(ライツ フォン ワン)」が注目を集めている。その理由は言うに及ばず。スマートフォン搭載カメラ用のセンサーとしては規格外に大きい1型センサーと、Summicron銘を冠したレンズを搭載しているからである。
写真撮影を趣味とする層が、スマートフォンとしてはもとよりカメラとしてどうだろう? と気になってしまうのは必然で、「ライカQ2」を愛用している筆者もその1人。緊急事態宣言中の短い期間ではあったが、端末をお借りし近所で試し撮りすることができたので、カメラ機能を中心にその使い勝手をお伝えしたい。
ライカブランドを冠する初のスマートフォン「Leitz Phone 1」なおITmedia Mobileでは、本機について複数の記事で詳報している。全体像についてはそれらをご参照いただきたい。
撮影に際してはAndroid標準のものではなく、本機専用に開発されたアプリを使う。起動すると特徴的なデジタルブライトフレームが表れる。これは撮影する範囲を示しており、M型ライカやQシリーズを使っているユーザーならニヤリとするはずだ。
デフォルトでは「1.0×」で表示されるが、撮影範囲の外もモニターされていることから分かる通り、実際にはセンサーをクロップしている。本来、フルの撮像範囲はライカ判換算19mmだけれども、1型センサーをトリミングして24mm相当で撮影しますよという状態である。
特に「これはいいな」と感じたのはデジタルブライトフレームの表示ロジックである。例えばライカQシリーズの場合、画角を狭めるほどブライトフレームも小さくなっていく。しかし本機の場合、1.0×から2.0×に変更してもブライトフレームのサイズは一定で、写真そのものを画角に合わせて拡大する形であり、フレームの広さは一定に保たれる(もちろんセンサーをフルで使う0.7倍時はフレーム自体表示されない)。これはこれで使い勝手が良く、同じデジタルブライトフレームを採用するライカQシリーズ後継機などにもフィードバックされるといいなと感じた。
カメラアプリを起動するとデジタルブライトフレームによってライカ判換算24mmの撮影範囲が示される(写真=左)。そこからセンサーを全て使う19mm画角(写真=右)にするには、倍率ボタンを2回タップする必要がある。なお中央には水準器が表示されるモニターに表示するガイド線について、三分割や黄金分割など一般的なものに加え、ややマニアックな「フィボナッチ線」なども用意されている。さすが「分かっている人向け」という感があり好印象。被写体を自由な位置に配置し、構図を厳密に意識しながら撮影するというのは、レンジファインダーや一眼レフではなかなか難しく、スマートフォンやミラーレスの得意とするところなので、ここにこだわるのは理にかなっていると思う。
ガイド線の候補は豊富(写真=左)。左右ともに用意されたフィボナッチ線はなかなかマニアック(写真=右)反面、少し気になったところを挙げるならば、デジタルブライトフレーム切り替え時の操作性である。
例えば本機と同様のデジタルブライトフレームを採用するライカQシリーズの場合、フルの撮像範囲は28mmで、35mm、50mm、そしてQ2であれば75mmまでブライトフレームを切り替えられるが「起動時に表示する画角を任意に設定できる」という点が本機との大きな違い。つまりLeitz Phone 1の場合、アプリ起動時には必ず「1.0×」が強制され、好みの画角を任意に設定できない。
倍率アイコンをタップするごとに1.0×(24mm)→2.0×(48mm)→0.7×(19mm)の順に切り替わるが、この順番も変更できないため、せっかくの1型センサーとSummicron銘レンズをフルで使おうとすると「アプリを起動してから倍率ボタンを2回タップ」という操作が必須となる。
筆者の場合、ライカQ2を35mmで常用しているくらいなのでトリミングについては全く抵抗ないのだが、この仕様と操作性について違和感を持つユーザーは多いだろう。デフォルト表示画角を任意設定できるようアプリをアップデートすれば解決できそうなこともあり、今後の更新に期待したい。
撮影モードはダイレクトに選べる。本機の場合、主に使うのは「写真モード」「マニュアル写真モード」「Leitz Looksモード」だと思う。「背景ぼかしモード」なども用意されているが、ここまでとがった仕様のLeitz Phone 1ユーザーがこういった機能を使うシーンは少ないのではないだろうか。もっと削ぎ落としたUI(ユーザーインタフェース)にしてもよかったのでは、という気はする。
jpeg撮って出しの写真を見ると、画作りの方向性としてはシャドーが締まりコントラストに芯のある印象。Lightroomでストレート現像したものと比較するとその傾向が見て取れる。富士フイルムやコダックと異なり、ライカはフィルム時代から画作りを担ってきたわけではないため何をもって「ライカらしい写り」とするのかは難しいが、このコントラストの出方が人々にそう感じさせるのかもしれない。
Lightroomでストレート現像した写真(写真=左)とLeitz Phone 1のjpeg撮って出し(写真=右)。彩度が抑制されシャドーが締まった写真になる傾向。なお、カメラ内jpegは歪曲補正の影響か、RAWとはピクセル数が微妙に異なるこちらも左がLightroomでストレート現像したもの。対してLeitz Phone 1の撮って出し(写真=右)はやはりコントラストが強め。なお光源によってはゴーストが出るようだデジタルブライトフレームを採用する機種同士ということでLeitz Phone 1(写真=上)とライカQ2(写真=下)の比較。ちなみにライカQ2は現行のライカM10と同じ画像エンジン(MaestroII)を搭載しており、機種ごとのチューンはあるにせよ同様の画作り傾向といえる。写真はいずれもjpeg。都合により撮影タイミングが異なることと、そもそものセンサーサイズが大きく違うことがあり、比較はあくまでも参考にとどめてほしい。なお被写界深度や画角を似せるためQ2はF8まで絞りクロップしている。一般的なスマホ写真と比べると彩度控えめなLeitz Phone 1だが、それでもQ2と比べるとパッと見で華やかな印象だ。ホワイトバランスもLeitz Phone 1の方がこなれているスターバックスで一休み。比べるとライカQ2による写真(写真=下)のホワイトバランスが緑被りしており、複雑な光源下ではLeitz Phone 1(写真=上)が安定しているといえそう。もっとも本家のMやQ、SLユーザーはjpegのままというよりRAW現像するユーザーがほとんどな気もする。なおLeitz Phone 1で撮影した写真は、ライカQ2のレンズ鏡筒の文字回りに「にじみ」が発生している。手ブレかと思いチェックしたが同時に撮影した全ての写真が同じ状態だった。Leitz Phone 1でコントラスト高めな被写体を近接で撮る際には注意が必要かもしれない【訂正:2021年8月30日16時50分 初出時に、ライカQ2の作例を上、Leitz Phone 1の作例を下としていましたが、正しくはライカQ2の作例が下、Leitz Phone 1の作例が上です。おわびして訂正致します。】
Leitz Phone 1で幸せになれるのはどんなユーザー?