全人類が読むべき文書…なのかな…?
演習中に未確認飛行物体が毎日のように現れてさっぱり集中できなくなってる問題で、米国家諜報部局トップが国防省をはじめとする関係各所の協力を得ながらまとめた「ペンタゴンUFOレポート」が6月25日ついに公開されましたね!
半年以内にまとめて提出するよう米上院が昨年、国家情報長官室に求めていたもの。結論からいうと怪現象の報告144件中1件はバルーンの誤認と確認できましたが、残りは「起源も目的も不明」です。歯も立ちませんでした。
でも、ずっと説明不能な現象を「存在するはずのないもの」としてうやむやのまま片付けていたことを考えると、こうして米国政府のインテリジェンス(諜報活動)のトップが全関連部局に確認して理解不能なものは理解不能と認め、文字にして発表したことは、科学的な真相究明に舵を切る大きな歴史の転換点と言えそうです。
脚注以外の全文を日本語に置き換えておきますね。
本予備報告書は、2021会計年度情報権限法(IAA)添付の上院報告書116-233の規定に対応し、国家情報長官室(ODNI)がとりまとめたものである。米国防長官(SECDEF)と協議の上、識別不能飛行現象(UAP)が及ぼす可能性のある脅威についてインテリジェンスサイドの所見を述べ、国防総省識別不能飛行現象タスクフォース(UAPTF)による脅威確認作業の進捗状況を盛り込んだ。
本報告書の狙いは、UAP(識別不能飛行現象)の脅威確認を阻む数々の障壁の概要を議会に説明すること、ならびに米軍および米政府(USG)の職員がUAPに万一遭遇した場合に備えて、有事の対応とポリシー、テクノロジー、演習の体制整備の道筋を示し、インテリジェンスコミュニティ(IC:諜報諸機関)の認知向上を図ることにある。UAP関連データの迅速な収集と統合の執行については、UAPタスクフォース長官がその責任を負う。報告書記載のデータセットは現状では、2004年4月から2021年3月までの間に発生が米国政府に報告された事例が主体となっているが、データは今後も引き続き収集と解析を進めていく。ODNIは議会情報委員会と武装サービス委員会に上梓する目的で本報告書を作成した。報告書のドラフトはUAPタスクフォースとODNI国家航空情報管理室がまとめた。まとめにあたっては、インテリジェンス&セキュリティ担当国防次官ならびにDIA(国防情報局)、FBI(連邦捜査局)、NRO(国家偵察局)、NGA(国家地理空間情報局)、NSA(国家安全保障局)、空軍、陸軍、海軍、海軍/ONI(海軍情報局)、DARPA(国防高等研究計画局)、FAA(連邦航空局)、NOAA(海洋大気庁)、NGA(国家地理空間情報局)、 ODNI(国家情報長官室)/NIM-新興・破壊的技術、ODNI/NCSC(国家防諜安全保障センター )、ODNI/NIC(国家情報会議)が情報を提供した。
UAP(識別不能飛行現象)を探知するさまざまな形態のセンサは、概して正常に動作し予備アセスメントに必要かつ十分な実測データを捉えているが、一部のUAPはセンサの異常による異常値検出の可能性も否定できない。
識別不能飛行現象(UAP)はハイクオリティな報告の件数が限られており、それがUAPの性質あるいは意図について確たる結論を導き出す作業の妨げになっている。識別不能飛行現象タスクフォース(UAPTF)は、米軍とIC(インテリジェンスコミュニティ:諜報諸機関)の供述するUAP関連情報を幅広く検分したが、報告は著しく具体性に欠ける。結果として、UAP発生状況の分析に必要なデータの確保には、それ専用の固有の報告プロセスの整備が必要との認識に至った。
一部の限られたインシデントでは、UAPによる通常考えられない性質の飛行が確認されたと報告されている。これらの観測は、センサ側のエラー、トリック、観測者の目の錯覚による誤認の可能性もあるため、さらにくわしく分析する必要がある。
既存の報告で述べられた外観および挙動からみて、UAPにはおそらく複数のタイプがあり、おのおの異なる説明が必要と思われる。われわれのデータ検分でもそのような構成が妥当との結論だ。個々のUAP遭遇の可能性とタイミングからみて「空中障害物、自然大気現象、米国政府/産業開発プログラム、敵国のシステム」という5つの説明カテゴリと「その他」に分類できそうだ。
報告対象のUAPが空中障害物(具体的にはバルーンだった)と断定できるのは1件であり、それ以外の現象はデータが不十分なため、特定の説明に振り分けるには至っていない。
UAPがフライトの安全面の問題をもたらすことは自明。米国国家安全保障を揺るがしかねない。安全上の懸念が降りかかる対象は、主にますます混雑する空の領域で苦戦する操縦士たちだ。また、UAPが敵国の情報収集用プラットフォームと判明した場合や、敵国がブレイクスルーまたはディスラプティブな技術を開発したエビデンスが示された場合は、国家の安全を揺るがす事態も予想される。
連邦政府全体から報告を吸い上げて常に統合するとともに、報告の統一化を図り、情報収集・分析を増強し、かかる報告すべてを関連性のある米国政府の広範なデータと照合してスクリーニングするプロセスを合理化することで、 理解を深める助けになる、より精密なUAPの分析が可能となるだろう。以上のステップには膨大なリソースを要するものもあり、追加の投資が欠かせない。
データが限られていることと、報告がコンスタントに行われないこと。これがUAPの評価検分の前に立ちはだかる主な障壁である。報告のメカニズムは2019年3月に海軍が策定するまで統一されたものが存在しなかった。空軍も2020年11月にこれを採用したが、その対象は米国政府の報告のみに限られている。UAPタスクフォースは調査を進める過程で、目撃したものの目撃者による公式/非公式の報告としては一度も記録に残っていないその他の目撃情報に触れる機会もよくあった。
このような情報を慎重に考慮した結果、UAPTFは軍の飛行士らが直接目撃し、なおかつわれわれが信頼度十分とみなすシステムからもデータが収集されたUAPに関する報告を重点的に洗うことにした。こうして対象となった報告は2004年から2021年までに発生したインシデントに関するものであり、新たな報告メカニズムが軍の飛行士らの間で知れ渡るようになった過去2年のものが大半を占める。うち1件については大型のバルーンとかなりの確証をもって特定できたが、残りの目撃報告については説明不能なままとなった。
〇大半の報告で、UAPはあらかじめ予定された演習やその他の軍事行動を阻害する物体と描写されている。
社会文化的スティグマとセンサの限界。これが相変わらずUAPのデータ収集を阻む二大阻害要因である。レーダ―の障害物を適切に除外する方法から、軍機および民間機のフライトの安全を図る方法まで、現場の課題を見ると、航空産業に前々からある課題もあれば、UAPでしか見れない独特の課題もあることがわかる。
報告は内容に大きな隔たりがあり、現時点ではデータセットも限られているため、具体的なトレンドやパターンの解析はできないが、形状とサイズ、特に推進力に関するUAP目撃情報を見ると、いくつかのクラスタに固まっているように思える。さらにUAP目撃情報は、米国の演習およびテストの現場周辺にクラスタ化する傾向も認められた。ただし、こうした傾向は極限の集中のなかで演習やテストが行われることや、こうしたエリアには最先端のセンサが数多く取り付けられていること、部隊の想定範囲、異常事態報告のガイダンスなど、情報収集のバイアスによるものと見ることもできそうだ。
目撃発生イベント18件(21件の報告が寄せられた)では、異常なUAPの動作のパターンや飛行の特徴が目撃者によって報告されている。
UAPは上空に風が湧き起こっても静止状態を保つように見え、向かい風で動き、突然マヌーバーし、また、かなりの高速で移動するが、われわれに識別可能な推進エンジンは特に見当たらない。少数の事例では、UAP遭遇に伴うラジオ波(RF:高周波)が軍用機の複数のシステムによって捉えられていた。
UAPタスクフォースは、UAPが加減速やシグネチャマネジメントがうかがえるデータをわずかながら保持している。データの性質と有効性の審理には技術の専門家部会で厳格な分析が必要だ。われわれ側でも分析を進め、ブレイクスルー技術の発現が確認されるかどうかの確認を急いでいる。
データセットは限られているものの、記録されたUAPはバリエーションに富む空中の動きを見せており、UAPには複数のタイプがあり、それぞれ別々の説明を要するという可能性が再確認された形だ。われわれのデータ検分でもそのような構成が妥当との結論だ。個々のUAP遭遇の可能性とタイミングから見て「空中障害物、自然大気現象、米国政府/産業開発プログラム、敵国のシステム」という5つの説明カテゴリと「その他」に分類できそうだ。
報告されたUAPが空中障害物(具体的にはバルーンだった)と断定できるのは1件であり、それ以外の現象はデータが不十分なため特定の説明に振り分けることはできない。
空中障害物:鳥、バルーン、趣味のUAVなどの物体。プラ袋などのデブリが空中に舞って視界を遮り、操縦者が敵機などの本来の標的を識別できなくなる場合もこれに含まれる。
自然大気現象:氷の結晶、湿気、気温の揺らぎが赤外線やレーダーのシステムに記録されたものなど。
米国政府/産業開発プログラム:米国政府機関が開発中の物体や極秘プログラムがUAPとして誤認される場合もある。ただし今回収集したUAPの報告については、これらのシステムに該当すると確認できた事例はなかった。
敵国のシステム:中国、ロシア、その他の国家や非政府機関が開発中の技術。
その他:われわれのデータセットで述べられたUAPはおそらくその大半が、データ不足や情報収集の処理・分析の困難さのため今後も識別不能のままかもしれないが、なかには収集・分析・特徴検分の実行に科学的知見の補強が待たれるものもある。かかる物体については、科学が進歩して理解が追いつくまで、とりあえずこのカテゴリに仕分けるものとする。UAPタスクフォースは、UAPが異常な飛行やシグネチャー管理を示したと思われる少数の事例に追加の検分を集中させていく方針だ。
UAPはフライトの安全を脅かすものである。米国の軍事行動を偵察する外国政府の高度な情報収集だったり、敵国による航空技術のブレイクスルーが確認される事案が発生した場合は、もっと広範な危険を及ぼすことにもなりかねない。
安全を脅かす物体に遭遇した場合、操縦者はかかる懸念を報告する義務を負う。領域侵入中の脅威者の位置、数、行動によっては、パイロットの判断でテスト飛行や演習を中断して着陸してもいい。
どのUAPを検分しても、外国政府の情報収集プログラムの一環であることを示すデータや仮想敵国による大きな技術の進化を示すデータは今のところない。ただ、敵国による防諜は困難な状況にある。特に一部のUAPは軍事施設付近で検出されており、また米国政府が擁する最先端のセンサシステムを搭載した航空機によって検出されたものもあるため、そのようなプログラムのエビデンスがないか今後も注意深く監視を続けていく。
2021会計年度情報権限法(IAA)添付の上院報告書116-233の規定に則り、UAPタスクフォースは作業の範囲を広げ、より幅広い米国政府の職員とシステムに記録されたUAP目撃イベントを分析に含めることを長期目標に掲げている。データセットの拡充が進めば、UAPタスクフォースがデータを解析してトレンドを検出する能力も向上が見込まれる。初期段階で注力するのは、AI/機械学習のアルゴリズムを導入して現象をクラスタに分け、データポイントの特性をもとに類似点とパターンを識別することである。既知の飛行物体(気象観測用気球や高高度気球、スーパープレッシャー気球、野生動物など)に関する情報がデータセットに十分集積された暁には、機械学習でUAPレポートを事前にアセスして記録内容がデータベース保存済みのイベントと一致するかどうかの確認が可能となり、作業効率はさらに高まるだろう。
UAPのデータは米海軍の報告が圧倒的多数を占めるが、これについては米軍サービスとその他の政府諸機関全体で特定の遭遇インシデントならびに関連度の高いと思われる米国の活動に関するあらゆるデータを記録すべく、遭遇インシデント報告手続きの統一化に目下取り組んでいるところである。また、米空軍(USAF)からの報告を含め、さらなる報告の回収に努めるとともに、連邦航空局(FAA)からのデータの受付も開始した。
UAPタスクフォースは、米軍が不在のときもUAPクラスタ発生地域で情報を収集する斬新な方法を模索中である。それができれば“標準的”なUAPの動きのベースラインを捉え、データセットに存在する収集バイアスの緩和になるだろう。レーダーが捉えて保存したデータの過去ログを高度なアルゴリズムを駆使して検索するのもひとつの提案である。UAPタスクフォースはまた省庁間のUAP情報収集戦略を見直し、DoD(国防省)とIC(インテリジェンスコミュニティ)から関連性の高い情報を集めるプラットフォームとメソッドを生み出していく予定だ。
UAPタスクフォースは、研究開発への追加投資が行われれば、本報告書に記載のトピックを掘り下げる今後の研究が可能になると指摘している。かかる投資はUAP情報収集戦略、UAP研究開発テクニカルロードマップ、UAPプログラムプランをガイダンスとして執り行うものとする。
以上いかがでしたか? ちなみに日本では「20年には当時の河野太郎防衛相が、自衛隊員がUFOを確認した際に写真撮影などで記録するよう指示した」とのこと。ラジオ波はたぶんこの「など」ってところに含められてしまったんでしょうね。いやあ…ときめくわー。
Sources: Office of the Director of National Intelligence