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 太陽光発電のすべて【2016年最新版】

太陽光発電のすべて【2016年最新版】

  • 太陽光発電の歴史と用語解説~日本はかつて世界一だった~
  • 太陽光発電のメリットと意義
  • 太陽光発電のデメリットと問題点
  • 太陽光発電とお金の事情
  • これから太陽光発電を導入しようというあなたに提案です!
  • 太陽光発電の施工を依頼する業者の選び方
  • 太陽光発電の施工の流れ
  • 太陽光発電設備のメンテナンス方法
  • 太陽光発電のまとめ
  • 太陽光発電。太陽の光を活用し、CO2を排出しないエコな電気を作るものです。ですが太陽光バブル崩壊などと言われたりして、太陽光発電の未来はどうなるんだろうとお思いではありませんか?ただ、あなたがこれから自宅の屋根に太陽光発電を載せるか検討中ということでしたら、自信を持って設置をおすすめします。

    太陽光発電の設置にあたってあなたが疑問に思うであろうこと、すべてをここにまとめました。読み終わる頃にはあなたは太陽光発電博士です。

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    太陽光発電ってどう?販売員の方に聞きました!

    太陽光発電に関するいろいろな疑問について解説する前に、ざっくり「太陽光発電ってどうなの?」という疑問をPV施工技術者の資格を持ち、某太陽光大手メーカーで営業を勤めるA氏に伺いました!

    画像はイメージです。

  • どう……(笑)。まぁ最近あんまり売れていないかな。電気の買取価格が下がって、太陽光バブルも弾けたしね。震災から時間も経って、エコの需要も薄くなってきたし。そもそも新築自体が減っているっていうのも大きいよ。

  • それは太陽光はもう元が取れないってことなんですか?
  • いや、そういうわけじゃないよ。買取価格が下がったって、10~15年で設備分は回収できるし、その後はずっと売電収入が手に入るから。

  • ずっととおっしゃいますけど、太陽光発電システムは壊れないんですか?いろいろ問題はあるって聞きますけど……。

  • 太陽光パネルそのものはほとんど劣化もしないし、壊れないよ(劣化について詳しくはメンテナンスフリーではないを参照)。日本で一番古い太陽光発電は30年以上稼働しているらしいしね。ただパワーコンディショナーは10年ぐらいで交換が必要になるかな。多くのメーカーが太陽光パネルに15年以上、パワーコンディショナーに10年以上の保証をつけているよ。基本的にきちんと施工すれば、ほとんど劣化なく長い間発電できるんだ。

  • なるほど……。これから太陽光発電の記事を書くんですけど、結局太陽光発電は人に勧められるものなんですか?

  • 自分だったら絶対つけるっていつもお客さんには言っているよ。太陽光の購入はコスト的に車に例えられることが多いけど、車と違って太陽光は必ずそのコストを回収できる。例え自分が働けなくなっても、太陽光だけはずっと仕事をしていてくれる。なによりエコなエネルギー源で地球にも優しい。初期投資以外にはデメリットはないし、僕の営業っていう立場もあるけど自信を持ってお勧めしているよ。

  • なるほど!ありがとうございます。

  • A氏によれば、太陽光発電はコストは回収できるし環境にも良いものだ、とのこと。いろいろ調べた結果、筆者も「基本的」に同様の見解に至りました。ただ、太陽光を導入するにはいくつも注意点があることも事実です。その点を踏まえて、太陽光発電に関する全てを見ていきましょう!

    太陽光発電の基礎知識

    降り注ぐ太陽光エネルギーを電気に変換することで、様々な用途に活用することが出来る太陽光発電。太陽光を電気に変える装置が「太陽電池」で、英語ではフォトボルテックPhotovoltic、略してPVと呼ばれます。ここではまず太陽電池の仕組みを紹介した後、太陽電池を用いた太陽光発電システムの基本的構造を見ていきます。ソーラーパネルを構成する太陽電池。皆さんも電卓や腕時計に付いているのを一度はご覧になったことあるはずです。写真のような小さな太陽電池も、メガソーラーと呼ばれる太陽光発電設備に用いられるものでも、実は構造は全く一緒なんです。この黒い板が一体どうやって電気を作っているのか、簡単に解説することから太陽光発電の話を始めていきましょう。

    半導体を利用して光を電気に変えるものが太陽電池です。「電池」と言っていますが、電気を貯める機能はないので本当は電池ではありません。その基本的な仕組みは、光の力で太陽電池内の電子を動かすことで発電するというものです。以下の図を見てください。

    太陽電池が電気を生み出す仕組み

    画像引用:太陽電池は電気的な性質の異なる2種類の半導体(n型・p型)を組み合わせて作られています。半導体とは、条件によって電気を通したり通さなかったりする物質のこと。太陽電池内の電子に光が当たるとエネルギーが溜まって(光電効果)動き出し、2種類の半導体で誘導し外部の電気回路に押し出すことで電気を生み出すのが太陽電池です。

    電気が生まれる流れ

    こういった性質から太陽電池の特質として、以下の2つのことが言えます。

    こういった性質を持った太陽電池を使った発電が、太陽光発電なのです。

    現在実用化されているのは紹介した半導体を用いた太陽電池(pn接合型)ですが、色素増感太陽電池という新しい太陽電池の研究も進んでいます。色素の中にある電子を利用するというものですが、従来のシリコンタイプと比べて幾つかのメリットが有ります。

    色素増感太陽電池のメリット

    2008年には色素増感太陽電池を使用したソーラーカーがレースで完走するなど、現在は実用の一歩手前といったところのようです。今は大きく重い太陽電池ですが、近い将来に壁や窓などあらゆる場所につけられて電気を生み出すようになるかもしれません。

    太陽電池は、2種類の半導体で電子を導き電気を生み出すと説明しましたが、その素材によっていくつかの種類に分けることが出来ます。

    いくつも種類がありますが、今、日本の太陽光発電に用いられているのは以下の4種類になります。

    それぞれにそれぞれの特徴があります。見ていきましょう!

    太陽電池の種類別の特徴

    系統種類モジュール変換効率主な国内メーカー特徴
    シリコン系単結晶13~20%東芝,シャープ等住宅用に人気。
    多結晶12~16%シャープ,京セラ等産業用に多い。
    ヘテロ接合(HIT)18~19%パナソニック住宅用に人気。
    化合物系CIS13~14%ソーラーフロンティア経年劣化が少ない。

    国内では競争激化による価格下落ともに、単結晶シリコン太陽電池の人気が高まってきていて、多くの国内メーカーが製造をするようになっています。

    多結晶シリコン太陽電池
    単結晶が1つのシリコンからできているのに対し、多結晶はいくつもの小さなシリコンを寄せ集めて作られます。そのためシリコンの並びが不規則で、まだら模様があり青色なのが特徴です。単結晶に比べて安価であるため、現在住宅用に設置されている太陽電池の約9割が多結晶シリコンを用いているともいわれています。

    国外メーカーは海外の主流である、この多結晶パネルを販売していることが多いようです。

    ヘテロ接合太陽電池
    結晶系シリコンとアモルファスシリコンを組み合わせた太陽電池です。単結晶や多結晶の太陽電池は高温になると変換効率が下がるのですが、熱に強いアモルファスシリコンを組み合わせることでそのデメリットを克服しています。

    パナソニックはHIT太陽電池という単結晶シリコンを使用したものを製造しており、国内に流通するヘテロ接合太陽電池のほとんどのシェアを占めています。対してカネカは多結晶を使用したものを販売しており、変換効率を犠牲にする代わりに薄くデザイン性に富んだものを製造しています。

    CIS太陽電池
    銅(Cu),インジウム(I),セレン(Se)の3種の元素を組み合わせた薄膜の半導体を用いる太陽電池です。国内では出光興産のグループ会社であるソーラーフロンティア1社が製造しています。まだまだ発展途上ですが軽量・フレキシブルになる可能性があり、いずれは電気自動車や建物に組み込まれることが期待されています。

    2014年まではCIGS太陽電池というガリウム(Ga)を追加で用いたものをホンダソルテックが製造していましたが、価格競争に敗れて撤退し現在では製造しておりません。

    各メーカーが変換効率、価格を巡って激しく争っている現状。変換効率は上がり、価格は下がっていくことになるでしょう。

    日本で商用として実用化されているもの以外にも、いくつか太陽電池は存在します。その特徴を簡単に見ていきましょう。

    さて、太陽の光から電気を生み出す方法と種類を把握した後は、それを運用する太陽光発電システムを見ていきましょう。このシステムは家庭用や産業用、さらにメガソーラーでも基本的には同じです。仕組み自体は単純なので、一つづつ理解していきましょう!

    画像引用:

    それぞれの項目の解説

    産業用太陽光発電システムでは、商用電力系統(6.6kVなど)を受電する場合、必要に応じて低圧の動力や電灯電源に変圧する「受変電設備」が必要になることもあります。

    それでは発電された電気がどのように流れていくのかを見ていきましょう!

    太陽光発電システムの電気の流れ

    夜間や雨天時などで、発電した電気では使用量を補えない場合は、電力会社から電気を購入します。対して晴れた昼間に発電量が使用量を上回り電気が余った場合は、それを電気のネットワークに流します。このように電気のネットワークに電力を送ることを「逆潮流」と呼びます(これに対して通常の電力会社から家庭への流れを「潮流」と呼びます)。

    太陽光発電システムは大きな電気のネットワークに接続されて、足りない場合には買電、余った場合は売電を行うのですね。

    電気は電圧が高い方から低い方に流れる性質を持っています。水とおんなじで、高い所から低い所に流れるのですね。自宅で電気を使用していると電気が足りなくなるので、自宅の電圧は低くなります。自宅の電気の池の水位が低くなっている感じです。すると配電線よりも電圧は低くなるため、電気が自宅に流れるというのが、通常の電力会社から家庭への電気の流れである「潮流」です。対して、自宅の使用量よりも発電した電気の量が増えると電圧が上がります。自宅の電気の池の水位が高くなっているのですね。すると配電線よりも電圧が高くなり、電気は自宅から配電線の方に逆に流れ出します。これが逆潮流の仕組みで、売電を行える仕組みです。

    太陽光発電にもいろいろな種類があります。民家の屋根の上に載っているものから、日当たりの良い土地に太陽光パネルがズラッと並んでいるものまで、規模によって大きく異なります。

    太陽光の導入区分は導入量(kW)によって以下の3種類に分けられます。

    では住宅用太陽光発電の導入量別(kW)の設置コストを見ていきましょう。かつては高級車に例えられた太陽光発電。その価格は現在どれほどなのでしょうか?

    太陽光発電のコストを考える時重要な考え方に、本体価格や工事費もろもろを含めた合計額から発電量(kW)を割った「kW単価」があります。設置に1kWあたりどれだけかかるのかが分かる簡単な指標で、太陽光発電の広告には必ずと言っていいほど登場します。例を上げてみましょう。あなたの家の屋根に、太陽光発電の販売会社2社が見積りを出してきました。

    この場合A社のkW単価は37万円、B社の41.7万円。見た目の価格はB社の方が安いのですが、費用対効果ではA社の提案の方がオトクということになります。

    2016年2月22日に発表された「平成28年度調達価格及び調達期間に関する意見(案)」によれば2016年度の予測kW単価は35.3万円(出力制御対応装置設置義務ありの場合は+1万円/kW)になります。

    日本の一般的な住宅の屋根に載せられる太陽光発電の容量3~5kW程度なので、その容量別コストの目安を示すと以下のようになります。

    導入量別コスト目安

    初期費用モジュール設置枚数(250Wの場合)
    3kW105万9,000円12枚
    4kW141万2,000円16枚
    5kW176万5,000円20枚
    出力制御装置なしの場合。出力制御装置については2016年度の買取価格は一体いくら?をご覧ください。一般的にモジュール設置枚数が増えるほどkW単価は安くなリますが、ここでは平均kW単価を単純にかけています。太陽光発電は屋根の形や設置する地域によって一軒一軒事情が異なるオーダーメードの一品物です。この数字は目安にしか過ぎませんが、導入を検討される際の参考にしてください。

    実際に何kW設置するべきかは一般家庭の方へで提案していますのでご確認ください。

    kW単価は「すべての費用」から求めます。安く見せるためにモニタ代や売電メーター代を含めないでkW単価を表示している会社が見受けられますが、それは相場の了解を無視しています。あなたが今見ている広告のそのkW単価。本当にすべての費用から求めているかチェックしてみてください。

    太陽光発電の歴史と用語解説~日本はかつて世界一だった~

    日本はかつて太陽光発電の導入量が世界一だったのをご存知ですか?生産量でもTOP5社をシャープを始めとした4社が占めるなど日本は太陽光発電大国だったのです。しかし2016年現在、そうした時代は終わりました。ここでは日本の太陽光発電の歴史を追いながら、太陽光発電に関わるいろいろな用語や事情を理解していきましょう!

    日本の太陽光発電の歴史

    ざっと並べると以上のような流れが現在までにありました。一つづつ見ていきましょう。太陽光を巡る様々な事情が見えてきますよ。

    1973年の第一次オイルショック、1978~1983年の第2次オイルショックで石油価格が高騰し、石油エネルギーに依存していた当時の世界経済は大混乱になりました。そこで省エネが叫ばれるとともに、石油以外のエネルギー源が求められることになります。これ以降、現在に至るまでエネルギー源の多様化とエネルギー自給率向上がエネルギー戦略の基盤となっていきます。

    その1つが再生可能エネルギーであり、太陽光発電だったのです。

    資源エネルギー庁では以下のように、再生可能エネルギーを説明しています。

    「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」として、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存する熱、バイオマスが規定されています。再生可能エネルギーは、資源が枯渇せず繰り返し使え、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しない優れたエネルギーです。

    出典:再生可能エネルギーとは

    であり、具体的には

    などがそれにあたります。石油や天然ガスを用いる火力発電で作られたエネルギーや、ウラン等を用いる原子力発電で作られたエネルギーは再生可能エネルギーではありません。

    1993年に日本では初めて、三洋電機(現パナソニック)によって住宅用太陽光発電が設置されました。当時の太陽光発電設備は非常に高額で、なんと4KWで1500万円!それでも新しい技術への関心や、省エネの観点から太陽光発電を住宅に導入する人は増え続けました。

    1994年から購入時の補助金の支給が開始され、日本の太陽光発電導入量は世界一になりました!日本人の環境意識の高さ、そして当時の豊かさを象徴していますね。

    しかし2004年にはドイツがFIT制度を太陽光にも導入し、爆発的に導入量を伸ばします。その後スペインにもFIT制度が導入され、その買取価格の高さから世界中の投機を呼び、太陽光バブルが生まれました。対して日本は2005年で補助金を打ち切り導入量が減っていたのもあって、2010年時点で世界3位にまで落ち込みます。

    2010年時点の導入量の国際比較

    これに慌てた政府は、補助金の復活と日本でもFIT制度を導入することを検討し、2009年には太陽光発電に対して部分的に導入を始めます。

    ただし、日本の太陽光発電導入の凄さとは単純な「量」ではなく、住宅用太陽光発電の導入割合の高さであったといえます。住宅用太陽光発電の割合が高いということは、都市部に分散した電源が存在するということです。これは災害に強い電源が都市部にあるということでもあり、山間部に巨大なソーラー施設を作ることよりもメリットが大きいのです。これは一般の日本人が真剣に環境を憂慮し、個人で環境のために動いた確かな結果でした。画像引用:

    FIT制度とは?解説

    ドイツやスペインの導入量を爆発的に増やしたこのFIT制度。正式名をフィード・イン・タリフ(Feed-in Tariff)といい、日本語では「固定価格買い取り制度」といいます。元はアメリカで考案されたもので、再生可能エネルギーを普及させる際の一般的な方法として広まっています。太陽光などを導入しようとした時、設備価格が大きな障害になります。作った電気を売るにしても、買取価格が安いと、高い設備投資をすることが難しいですよね。そこで国が一般的な電気価格よりも高い買取価格を設定し、それを一定期間(太陽光の場合は住宅用10年産業用20年)補償する制度がFIT制度なのです。長期間の買取保証をすることで、初期投資の回収の目処を立てやすくして投資や融資を促し、再生可能エネルギーの割合を増やすことが目的です。補助金制度が設備購入の補助にすぎないのに対し、FIT制度はより長い期間を保証するものと言えましょう。ですが一点だけ気になることがありますよね。販売価格よりも高く再生エネルギー由来の電気を長期間買い取るこのFIT制度。その差額を負担しているのは、一体誰だかお分かりですか?正解は、我々一般の国民です。正確には、電気を使う全ての人と言ったほうが良いでしょうか。通常の電気料金に、再エネ賦課金(サーチャージ)という形で上乗せされているのです。平成27年度の再エネ賦課金は低圧の場合kWあたり1.58円なので、1世帯の年間電気使用量5156kwh(日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編2014より)だとすると1世帯あたりの負担は年間約8,146円(月平均678円)にもなります。住宅用太陽光発電の買取期間が10年、産業用が20年なので、2020年頃から再エネ賦課金は減少していきますが、最大で1kWあたり3円程度まで上がると推計されています。

    2012年7月からFIT制度が日本でも導入されます。東日本大震災の電力不足や原子力発電からの転換で再エネへの機運も高まっていて、国際基準の約2倍にあたる買取価格(産業用40円/kWh)が設定されました。さらにそれまで認められていなかった電気を全部買い取る全量買取制度が認められ、太陽光発電事業の基盤を整えました。そして施行後3年間を利潤配慮期間とし、高い買取価格を維持することも決められたのです!負担を国民が背負うというのも、この高い価格が認められた一因でしょう。

    さらに設備投資分の即時償却を認める「グリーン投資減税」の節税効果、日本各地に有り余る遊休地の有効活用、環境アセスメントが不要ということ。それらが相まって、一気に太陽光発電に投資が流れ込みました。また買取価格も10kW以上の産業用で一律で、規模が大きいほど事業性が向上するため、日本中に大規模な太陽光発電施設(メガソーラー)が作られたのです。

    太陽光バブルが起ったわけ

     太陽光発電のすべて【2016年最新版】

    FIT制度導入直後の2012年11月時点の認定を受けた設備量は、風力その他が38.8万kWであるのに対し太陽光は326万kWと8倍以上にも昇り、以降日本のFIT制度は太陽光発電投資を加熱させていきます。結果として利潤配慮期間の3年間が過ぎた2014年度末までの設備認定8,800万kWの内、94%が太陽光発電が占めることになりました。そして日本の累積導入量は爆発的に伸び、ドイツ中国に次ぐ世界3位になります。

    世界の太陽光発電の国別導入量ランキング

    またかつて住宅用が95%を占めていた国内導入量は、産業用やメガソーラーの大量導入で大きく割合が変わりました。

    国内での太陽光発電の導入量の推移

    上の図を見て分かるように、FIT制度とそれが引き起こす太陽光バブルで産業用とメガソーラーの導入量が爆発的に伸びていることが分かりますね。画像引用:

    太陽光バブルによって爆発的に増えた太陽光発電の導入は、ついにある問題を引き起こします。まずは以下の表を見てください。

    電力各社の接続可能量と接続申込量の状況(2015年1月)

    出典:赤枠で囲われている接続可能量を、認定量が大幅に上回っていることが分かるでしょう。もし接続可能量を超えて太陽光発電が接続されると、配電網全体の電圧が上昇し通常の潮流に支障をきたすバンク逆潮流問題が起ってしまいます(バンクとは変電所から需要家までの配電系統のこと)。この事態を受けて、2014年9月に九州電力が既存・新規を含めて全ての接続の申込を中断し、同様の状況にあった北海道、東北、四国、沖縄電力もそれに続きました。これは太陽光事業を予定していた多くの事業者に衝撃を与え、2015年1月には事実上の導入制限を設ける形で制度が変更されました。そして50kW以上の高圧・特別高圧設備を連携する際には、バンク逆潮流対策の工事費を設置者が負担することになったのです。これをきっかけに日本のFIT制度への反省と改革が進められることになります。

    3年間の利潤配慮期間で日本の太陽光導入量や再エネの割合は高まりました。今後は大規模太陽光発電の導入を抑え、住宅用太陽光発電の拡充と他再生エネルギーの導入の推進が主になります。これまでは闇雲に導入量を拡大してきましたが、技術の進歩を踏まえて省エネを図りながらより効率的な利用方法を探っていく段階になっているのです。

    今後の再生可能エネルギーに関しては以下の様な方向性で、拡大が図られていきます。

    2016年3月にも政府がエネルギー革新戦略を発表する予定で、トップランナー制度の導入など徹底的な省エネを図る方向へ進んでいくようです。太陽光発電もただ電気を売るために屋根に太陽光発電を設置するのではなく、作った電気を自分で使用する時代に変わってきているのです。売電住宅から創エネ住宅、特にゼロエネルギー住宅が今後の太陽光のトレンドです。

    ゼロエネルギー住宅(ZEH)とは「エネルギー収支がゼロ」の住宅のことです。

    具体的には以下の設備を備えて、エネルギー使用量と消費量がプラスマイナスゼロになる住宅のことを示します。

    ゼロエネルギー住宅の装備

    省エネ性能を向上させてエネルギーの消費量を減らすとともに、太陽光発電で発電して1年間の1次エネルギー使用量を賄おうという新しい住宅の形で、政府は2020年までにゼロエネルギー住宅を標準仕様にすることを目指しています。2012年から補助金も交付されており、2016年度も交付される見込みになっています。ミサワホームは2017年度の販売新築を全てゼロエネルギー住宅にし、パナホームも2018年度には85%にすると発表しています。これからの新築はどんどんゼロエネルギー住宅になっていくんですね。

    実は現在、太陽光発電そのものには、一部の自治体を除いてほとんど補助金が交付されていません。今後補助金の対象となっているのはHEMSや蓄電池と合わせた総合的システムに対してであり、エネルギーを自給するゼロエネルギー住宅です。ただ発電して売電するだけの太陽光発電の時代は終わったのです。

    太陽光発電のメリットと意義

    さて、太陽光発電はいかなるものか、そして太陽光発電を巡る現状を十分にご理解いただけたと思います。ここからは太陽光発電が、実際にどういうメリットがあるのか具体的に見ていきましょう。

    太陽光発電は再生可能エネルギーであり、発電に際してCO2はおろか一切の有害物を排出しません。地球温暖化が叫ばれる昨今これはとても重要なことです。

    以下の図をご覧ください。出典:太陽光発電のCO2排出量は、日本の発電割合の約半分を占める石油火力発電の約20分の1で、環境にやさしい発電方法であることが分かりますね。

    この自分で電気を作れるということが、個人にとっても政府戦略にとっても太陽光発電の最も大きなメリットになります。自分で発電できるということは、あなたは小さな発電所の所長になり、政府戦略的には小さな発電所が都市にたくさん出来るということなのです。

    小さな発電所長になるという事

    今までは、電力会社が作っていた電気がコンセントからただ流されてきただけでした。好むと好まないとにかかわらず、火力発電や原子力発電で作られた電気を買うしかなかったのです。ですが太陽光発電を設置すれば、使う電気の大部分をエコな電気で占めることが出来ます。太陽光発電を設置すれば、主体的に電気を巡る流れに参加できるようになるのです!

    小さな発電所がいっぱいあるという事

    太陽光発電を始めとした再生可能エネルギーの普及は、日本の最重要課題でもあるのです!

    太陽光発電を設置すると電気代が安くなる!

    ……と多くのメーカーや販売店は宣伝していますが、それは太陽光発電と使用電力のグラフが以下のようになるからです。

    一般家庭の余剰分買取制度の電力使用図

    出典:整理してみましょう。

    つまり、昼間の電気代と、売った電気の分電気代が安くなるのですね。もしこの2つの合計が電気代を上回れば、電気代はかからなくなり利益が生まれます。太陽光発電を設置する規模や状況によりますが、3kW以上設置すれば4人家庭の電気代は十分に賄い、売電収入を得ることが出来るようになります。どれほどの金銭メリットがあり、何年で元が取れるのかの検証は4kW設置のシミュレーションをご覧ください。

    太陽光発電に加えて家庭で使う全てのエネルギーを電気に統一するオール電化住宅にすれば、光熱費全体を安くすることが出来ます。なんと、パナソニックの試算では、太陽光発電に加えてオール電化住宅にすると光熱費は100%削減できるとか!富士経済が2014年に発表した「電力小売全面自由化で新たな展開をみせる創エネ住宅とオール電化住宅の動向を調査」によれば、2013年度で562万戸だったオール電化住宅は2025年度には1029万戸になり、5戸に1戸はオール電化になると予測しています。ただ、震災を経て光熱費が安くなるからだけの目線だけではダメなようで……。

    時代の流れはオール電化と太陽光発電を備えた創エネ住宅なのですが、導入の際にはきちんとメリットとデメリットを把握しておくことが大事なのですね。

    光熱費がゼロになるかもしれないオール電化についてもっとくわしくはコチラの記事をご覧ください。

    オール電化のメリットとデメリットを徹底紹介

    電気を売って収益を上げることが出来る、これが投資としての太陽光発電です。住宅用でも投資用のメガソーラーでも、電気を売って儲けることが出来るんです。

    住宅用太陽光発電(10kW以下)の場合は、上で説明したように昼間の発電が使用量を上回った場合に、その余剰分を売電することが出来ます。これを余剰買取制度といいます。対して10kW以上の太陽光発電は、この余剰買取制度と全量買取制度を選択することが出来ます。以下の図を見てください。

    全量買取制度とは電気の質にかかわらず、発電した全部の電気を電力会社が買い取ってくれる制度です。投資用のメガソーラーやビルなどに設置されている太陽光発電は、この方法で利益を出しているんですね。特に産業用はFIT制度で20年間の固定買取が約束されているので、投資が集中しました。これが太陽光バブルですね。

    この電気を確実に売ることが出来る仕組みがあるおかげで、住宅用でも規模によっては初期費用を回収した後でも、利益を出してくれるのです。

    電気代が高い時間と安い時間があることをご存知ですか?

    電気の需要が高まる昼間は値段が高く、需要が少ない朝や夜は安いのです。太陽光発電で昼間の電気を補うと、その高い電気を使わなくてすむのでその分お得になります。

    ライフスタイルに合わせた電気料金プランに変更するだけで年間1万円以上の電気代の節約になることもあるんですよ。

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    また、電力会社は夏の昼間のピーク時に停電をしないように、そのとき専用の発電所を持っています。太陽光発電が普及すればピークの昼間の電力使用量を減らすことができ(これをピークカット効果といいます)、この部分を大きくコストカットすることが出来るようになります。そうすれば電気料金も下げることが出来るようになりますよね。これも太陽光発電の大きなメリットなんですよ。

    太陽光発電のデメリットと問題点

    次に太陽光発電のデメリットを見ていきましょう。

    コストの章でも見ましたが、4kW設置するためには150万円程度の予算を見込んでおく必要があります。まさに車を購入するのと同じ規模感ですよね。

    電力事業というのは典型的な設備投資事業で、高い初期投資を10年単位で回収する忍耐強さが必要です。原資を回収する前に、家が倒壊するとか社会情勢の激変がないともいえません。初期投資が大きく回収に時間がかかるということが、太陽光発電の最も大きなリスクなんです。

    突然ですが「那覇市(沖縄県)」「松本市(長野県)」「東京」に同じ条件同じ容量の太陽光発電を設置した場合、どの都市が1番予測発電量が多いと思いますか?

    イメージ的には日差しの良い那覇なのかな?なんて思われるかもしれませんが、意外や意外、年間推定発電量が一番多いのは「松本市」なのです。というのも発電量には、日照時間と気温が大事な要素で、暑すぎるとダメなんですね。以下の図を見てください。長州産業が発表した地域別の年間推定発電量です。

    全国各地の4.96kWシステム年間推定発電量(長州産業)

    画像引用:思っていたイメージと少し違いませんか?太陽電池は日射時間が長く強い日差しがあると発電量が増えるのは確かですが、温度が上がると発電効率が下がるという性質も同時に持っているためこのような地域差が生まれてしまうのですね。

    左図を見てください。気温が上がるにつれて最大出力が低下しているのが分かります。結晶系太陽電池は60℃になると、25℃時のカタログスペック比で約20%も出力が低下してしまうのです。この問題に対して各メーカーも努力をしていて、熱に強いアモルファス太陽電池と組み合わせたパナソニックのHIT太陽電池、ソーラーパートナーズの化合物系のCIS太陽電池は約5%、熱による出力低下を押さえられるとしています。画像引用:真夏の屋根の上は60~80℃にはなりますから、真夏の発電量は実はさして多くありません。年間の発電量推移のグラフを見ると、7月8月の真夏よりも涼しい5月に発電量が増えていることが分かります。画像引用:

    気温が低く、日照時間の長い地域が有利なのですが、雪が降って太陽電池の上に積もってしまうと発電ができなくなってしまいます。ですので、雪が降らない(少ない)程度に気温が低く日射時間が長い地域が、太陽光発電に適した地域なのです。

    太陽光発電に適した地域

    みなさんが設置を考えている地域は、太陽光発電に適した場所ですか?各メーカーが発表している地域別推定発電量で確認してみてください。

    場所によって発電効率が変わるのは上で見たとおりですが、屋根の「角度」と「向き」も大きく影響します。リフォームなどで既築に設置する際に、これは結構大きい問題になるんです。

    太陽光パネルを設置するのに適しているのは南側の屋根です。一般的に北側の屋根への設置は発電効率が少ない上、隣家への光害の影響もあるので設置が推奨されていません。太陽光発電を設置しようと思っても、南側に多くの面積を割けないと十分な発電量を得ることはできないんですね。

    画像引用:また太陽光パネルは適した勾配で設置しないと、効率のよい発電ができません。パナソニックによると、勾配によって以下の様な発電量の差がでます。

    勾配別発電量(Panasonic調査)
    屋根勾配年間予測発電量
    3寸勾配(約16.7度)5,653kWh
    4寸勾配(約21.8度)5,722kWh
    5寸勾配(約26.6度)5,750kWh
    6寸勾配(約30.9度)5,760kWh
    7寸勾配(約34.8度)5,731kWh
    HIT244α,4.88kW,大阪,真南の場合このように勾配によって、最大2%程度の発電量の差が生まれることが分かりますね。一般に勾配30度、6寸勾配が最も発電量が大きいと説明されることが多いのですが、これは全国平均にすぎません。実際は、地域によって最適な勾配が異なります。

    各年の最適傾斜角の年間平均(真南の場合)

    地域名最適傾斜角(年間平均)対応する勾配
    札幌市34.8度7寸勾配(約34.8度)
    仙台市34.5度7寸勾配(約34.8度)
    静岡市33.3度6.5寸勾配(約33度)
    東京都23区32.8度6.5寸勾配(約33度)
    名古屋市32.5度6.5寸勾配(約33度)
    横浜市32.5度6.5寸勾配(約33度)
    松本市32.5度6.5寸勾配(約33度)
    広島市29.8度6寸勾配(約30.9度)
    大阪市29.2度5.5寸勾配(約28.8度)
    松山市28.5度5.5寸勾配(約28.8度)
    鹿児島市27.7度5寸勾配(約26.6度)
    福岡市26.1度5寸勾配(約26.6度)
    金沢市25.7度5寸勾配(約26.6度)
    新潟市25.0度4.5寸勾配(約24.2度)
    那覇市17.6度3寸勾配(約16.7度)
    NEDO日射量データベースより作成。西向き東向きの場合は、最適傾斜角は低くなります。見ていただけると分かりますが、おおむね北は角度が高く、南は低いという結果になっています。理由としては緯度が下がって赤道に近づくほど、太陽と地平線の角度(南中高度)が高くなり、それによって最適な傾斜角が変わるからですね。札幌市と那覇市では、実に16度も最適傾斜角の差があります。メーカーのカタログスペックは南側の最適角度で求められているので注意してくださいね。

    また傾斜がゆるいと、ホコリや雪がつもりやすくなる傾向があります。

    以上で見たきたように、太陽光発電は南側に適した角度で設置しないと、発電効率が下がってしまうのです。

    これは太陽光発電を投資として考えると、気になるところですね。太陽の光で発電する以上、雨が続いたりすると発電量は減ってしまいます。

    晴天時の発電量を100%とした場合の天候の影響

    エネチェンジ編集部調べ

    曇りや雨の時の発電量は以上のように5割~1割にまで落ち込みます。経済産業省は、太陽光発電システムの年間発電量は設備容量(100%の条件で発電しつづけた場合の能力)の13%程度として計算しています。つまり天候諸々を含め、全国平均で13%稼働すると考えているということですね。天候によって発電量が左右されてしまう不安定性がある、ということも太陽光発電のデメリットです。

    太陽光発電の営業文句に「メンテナンスフリー」という言葉があります。ですが実際のところ、まだ技術的にそこまで成熟していないのです。

    確かに太陽光パネル自体はモーターを使用しない極めて単純な構造ですので、なかなか壊れません。実際、太陽電池をどれぐらい使うと劣化したり壊れたりするのかはよく分かっておらず、保証期間である期待寿命約10~20年という数字もさして根拠があるわけではないようです。ただしパネルそのものはあまり劣化しなくても、不適切な工事による故障やモーターを使用しているパワーコンディショナーの故障は普通に起こりえます。太陽光発電の買取価格を決定する調達価格等算定委員会によると2016年度の年間運転維持費は、住宅用で3200円/kW、産業用で6000円/kWになっています。これは仮に4kWの設備を設置した場合、20年間のメンテナンス費用は25万6000円にもなります。詳しくは4kW設置のシミュレーションをご覧ください。現在ほとんどのメーカーがパネルとパワーコンディショナーに、10年以上の出力保証をつけていますが、それは裏を返せば保証が必要ということ。太陽光発電は決してメンテナンスフリーではありません。

    太陽光発電とお金の事情

    太陽光がどういうものか、一通り分かりましたね?ではここで、気にあるお金の話を始めましょう。

    2016年2月22日に平成28年度調達価格及び調達期間についての委員長案が委員会で承認されました。このあと経済産業大臣の認可がまだ必要なのですが、実質決定したと言ってよいでしょう。それを元にこれまでの買取価格の推移を以下に表にしました。

    買取価格の推移
    2012年度2013年度2014年度2015年度2016年度(予定)
    住宅用太陽光発電(10kW未満)42円/kWh38円/kWh37円/kWh33円/kWh35円(制御対応)31円/kWh33円(制御対応)
    非住宅用太陽光発電(10kW以上)40円/kWh36円/kWh32円/kWh29円/kWh27円(7月以降)24円/kWh
    順調に下がっていっていることが分かりますね。では太陽光発電を導入する金銭メリットも少なくなってしまっているのでしょうか?次の章でシミュレーションを見ていきましょう!

    平成27年度の固定買取価格の欄を見てください。2つの価格が表示されており、下の方には(制御対応)と書いてありますね。これは九電ショックを受けて、太陽光発電の発電量を制御する機械(出力制御対応機器)を取り付けることが一部の電力会社管内で義務とされたからです。

    出力制御対応機器が必要な電力会社

    東京・関西・中部電力以外これらの地域では太陽光発電システムに、出力制御対応機器を設置する必要があります。費用はkWあたり1万円程度。出力制御機器の役目は、ピーク時の電圧上昇(発電)抑制になります。晴れた昼間などは太陽光発電の出力が大きくなり、電力会社のキャパシティを超えてしまうことがあります。そうならないように電力会社が各太陽光発電を操作して、発電しないようにするための機械になります。電圧抑制が行われるとその時間内の発電が行われなくなるので、買取価格が高く設定されているのです。

    電圧抑制に関して詳しくはコチラでまとめています。出力制御機器が必要な地域にお住まいの場合は是非チェックしてください。

    売電で電気を送り出すしくみと、売電量が減ってしまう電圧抑制とは?その対策は?

    さて、それでは具体的なシミュレーションを見ていきましょう!

    太陽光発電でオトクになる部分は

    の2つの合算になります。日中とは朝の7,8時から夕方5,6時くらいの日が出ている間の時間です。この間は太陽光発電が発電するので、設置前にかかっていた電気代がかからないのです。その金額に余った電気の売電額を足したものが、太陽光発電の利益です。このオトク分で初期投資を回収し、その後はそれが利益になるというのが投資商品としての太陽光発電なのです。1つ例を上げてみましょう。

    4人家族が南向きの屋根に141万円で4kWの太陽光発電を設置しました。南向きに設置した場合は年間で1kWあたり平均1100kWh発電しますので、この太陽光発電は1,100×4で4,400kWhになります。昨年1年間の電気使用量は4500kwh、電気料金は121,500円でした。日中の使用電気量を全体の30%とすると、使用量は1350kwh、電気料金は年間36,450円になります。つまり年間売電量は4,400-1,350で3,050kWhになります。電気料金は27円/kwh(平成26年度電力料金目安単価)で計算

    以下は出力制御装置設置義務のない東京・関西・中部電力管内にお住まいの場合のシミュレーションです。

    10年間の年間回収額

    住宅用太陽光発電のFIT制度による買取価格保証は10年ですので、そこから先の買取価格は実はまだ未定です。ですが、2016年1月資源エネルギー庁発表の「再生可能エネルギーの導入状況と固定価格買取制度見直しに関する検討状況について」によると今後想定される状況として買取期間終了後の売電の便益は卸売電力市場価格の11円と想定することを提案していることから、ここではFIT期間終了後の買取価格を11円として計算します。

    10年以後の年間回収額

    という様になります。これをグラフにすると以下のようになります。

    4kW導入シミュレーション(2016年度版)

    縦軸の単位は万円12年目に投資分を回収し、20年後の表面利益は600,000円になります。これが発電量から導き出した表面的な収入シミュレーションです。ここから設備の故障や点検費などの運転維持費が引かれていくことになります。

    運転維持費の目安

    パワーコンディショナーには10年から15年の保証が付いていることが普通ですし、業者によっては無料点検を打ち出しているところもあるので、運転維持費がどれほどかかるのか明確に出すことは出来ません。ただし、調達価格等算定委員会が市場平均としてメーカーなどにヒアリングした運転維持費は、1kWあたり年間3,200円になります。この数字を元にすると、4kWの太陽光発電を20年運用した場合の運転維持費は、3,200×4×20=25万6,000円になります。仮に4年に1度、2万円の有料定期検診を受け、一度20万円のパワーコンディショナーを自己負担で交換した場合の20年後の手残りは344,000円になります。

    4kWの太陽光発電を20年設置した場合、原資を回収し60万から35万円程度の収入を得られることが分かります。では、買取価格が下がっている中で、2016年度以前との比較するとどうなっているのでしょうか。

    買取価格が下がって太陽光バブルが崩壊したと言いますが、実際住宅用太陽光発電では特に利益率が大きく変わってきたわけではありません。買取価格が下がるとともに、設備価格も平行して下がってきているからです。以下の表をご覧ください。

    2012年度~2016年度の4kW設置のシミュレーション

    2016年度2015年度2014年度2013年度2012年度
    買取価格31円33円37円38円42円
    年間回収額(10年)131,000円137,100円149,300円152,350円164,550円
    設備額141万円150万円154万円166万円186万円
    利回り(FIT10年間)9.3%9.1%10%9.2%8.8%
    回収年数11年6ヵ月11年10ヵ月10年9ヵ月12年13年1ヶ月
    20年目の総利益600,000円571,000円653,000円563,500円485,500円
    2016年度,2015年度の設備額は平成28年度調達価格及び調達期間に関する意見案より。2014年までの設備額は平成26年度 住宅用太陽光発電補助金交付決定件数・設置容量データから算出

    どうでしょう、ほとんど利回りや回収年数に違いがないのが見て取れるのではないでしょうか。太陽光バブルが弾けた!買取価格が下がり続けている!とはよく聞く言葉ですが、10kW以下の住宅用ではほとんど変わっておらず、原資を回収して安定して収益を出せるのです。

    FITが開始された2012年7月から3年間は利潤配慮期間とされ、太陽発電業者の利益が保証されました。結果として太陽光発電に投資が集中し、日本各地に太陽光発電施設が建設されました。さて、2016年度の買取価格で10kW以上の産業用太陽光発電の投資性はどのように変わるのでしょうか。

    太陽光発電の実運転量は現在約27GWですが、認定量(約82GW)は2030年の目標(約64GW)を既に超えています。政府は2017年度から施行予定の「新認定制度」を元に認定だけを受けて稼働していない案件を一掃し、2030年の稼働目標を達成する方針です。ただし2016年度時点では、どれだけの未稼働案件(滞留案件)を排除するかの目処が立っておらず、利潤配慮期間修了後2015年7月以降の利益率を守る形で2016年度買取価格は決められました。2016年度の産業用買取価格はFIT制度開始直後の4割減の24円/kWhになりましたが、設備価格下落を含めるとある程度の利益が見込める金額となっています。

    これから太陽光発電を導入しようというあなたに提案です!

    太陽光発電について、ほぼほぼ分かってきたところでしょう。そこでここで読者の皆様に提案します!

    冒頭のA氏の見解と同様に、本記事でも基本的に一般家庭の皆様には太陽光発電の設置をおすすめします。

    屋根の形や設置する地域にもよりますが、太陽光発電は原資を回収し、回収後も安定して利益を出してくれるものです。環境にも優しいエネルギーを使い、電気を主体的に使うことが出来るようになる喜びは代えがたいものです。新築の方は予算が割けるならば、設置するべきですし、既築の方も資産運用の一環としてリフォームの機会にぜひ設置を検討していただければと思います。

    先程は4kWのシミュレーションを見ましたが、ここではどれぐらい導入すればいいのかの目安として日本の住宅用の主である3~5kWのシミュレーションを見てみましょう。

    導入量別シミュレーション
    導入量5kW4kW3kW
    設備額175万円140万円105万円
    1年間の金銭メリット(FIT10年間)165,100円131,000円96,900円
    1年間の金銭メリット(10年後)82,100円70,000円57,900円
    回収期間11年3ヶ月11年6ヶ月11年4ヶ月
    20年後の総利益722,000円600,000円498,000円
    回収期間はどれもあまり変わらないことが分かります。各家庭の考え方や予算にもよりますが、設備維持費などが変わらないことを踏まえると、4kW以上の設置をおすすめしたいところです。

    また、太陽光発電を設置したいと思っても、既築の場合にはいくつか考慮するべきポイントがあります。

    既築の場合注意すること

    ゼロエネルギーハウスZEHには蓄電池が重要な役割を果たします。パナソニックなどの一部メーカーも蓄電池と太陽光発電を合わせた創蓄連携システムを販売しています。ここでは蓄電池のメリットとデメリットを見ていきましょう。

    太陽光+蓄電池のメリット太陽光+蓄電池のデメリット

    蓄電池併設の最も大きなメリットは、自分で作った電気を余すことなく自分で使えるところにあります。太陽光発電単体だと、余った電気は電力会社に売るしかなく、夜間はこれまで通り電気を購入するしかありませんでした。そのため災害時などで停電しても、昼間太陽が出て発電している間しか電気は使えません。しかし蓄電池を併設することで電気の自給自足を目指せるようになるのです。

    利潤配慮期間は終了しましたが、2016年度はある程度の利益が見込める買取水準が保たれています。ただしそれも2016年度までである可能性が高いです。

    未稼働案件の排除の状況によりますが、想定通り40~50GWが新認定制度に適合しているならば、2017年度には買取価格決定方法に入札方式やトップランナー方式(トップランナー=最も性能が優れている機器を基準とする方式)が導入され、買取価格が10円台になる可能性があります!いずれにせよ既存の買取価格策定の方法は2016年度で終了になりますので、今太陽光発電施設の新設を考えているなら、2016年度中の設置をおすすめします。

    太陽光発電の施工を依頼する業者の選び方

    太陽光発電の施工の流れ

    さぁ、ここまで読んできて太陽光発電を考えてもいいかな、と思ったあなた!実際に導入の道筋を見ていきましょう。

    太陽光発電導入の流れ

    それぞれ詳しく見ていきましょう。

    先ほど紹介した一括見積もりサイトで無料見積りをすると良いでしょう。インターネットで屋根の形など簡単な内容を入力して見積り依頼を送ると、一括見積もりサイトの担当者から電話が来て相談することになります。上記5社はどれも大変親切に対応してくれますので、不明点をぜひ聞いてみましょう。今後不明点があったらすぐ彼らに相談する、というスタンスを忘れないで下さいね。

    見積もりサイトから紹介された地域の販売会社3~5社が、現地調査にやってきます(その前に図面による概算見積もりを出してから行うこともあります)。

    準備しておくと良いこと

    向こうから説明してくれることもありますが、そうでないことも多いので以下のポイントを聞いてみましょう。

    聞いておくと良いポイント

    時間としては45分~1時間半程度で終了します。今後20年以上付き合っていけるかどうかを考えながら、業者さんをもてなしてくださいね。

    はじめに言っておきますが、見積書には実は大した情報は載っていません。というのも各社で書き方もマチマチで、分類の項目などもてんでバラバラだからです。ですので、細かい項目がどうこうというより重要なことは、見積書の金額と発電シミュレーション、さらにアフターフォローが適正かどうかを確かめるということになります。そのためには相見積もりが不可欠ですので、必ず複数の会社に見積もりをもらってくださいね。

    簡単チェックポイント

    契約の際には、工事日程をしっかり確認してください。補助金の手続きは住民票や印鑑証明書等を用意して、業者と一緒に手続きをすることになります。全国の補助金についてはパナソニックのページが分かりやすくまとまっているのでご確認ください。太陽光発電システムの補助金を調べる/パナソニック

    契約からだいたい1ヶ月で工事が始まり、基本的に1日で終了します。室内の電気工事もあるので、どなたかの同伴が必要で、最後には一度ブレーカーを落とす必要があります。当日大切なことは工事をチェックすることよりも、簡単でいいのでお茶を出すなどして職人さんをもてなすことです。工事で起きる問題の多くは技術不足などではなく、心理的なものがほとんどだといいます。簡単な気遣いでいいので、職人さんが気持よく作業できるようにしてください。

    標準で提供されるものではないのですが、現場で接続した実際の太陽光パネルのつなぎの図(配置図)をもらっておくことをおすすめします。というのも、現地調査による見積り時の図面と、現地対応で当初の仕様と変更されていることがあるからです。メンテナンス時に重要な図面になりますので、ぜひ提供してもらいましょう。

    工事のあとは売電メーターを取り付け、電力会社の人が来て連係接続をしてもらいます。運が悪いと「工事日」「売電メーター取り付け日」「連係日」が別になってしまうこともありますが、契約からおおむね2ヶ月ですべて終わります。接続されると売電メーターが回りだし、発電量のメモリがぐんぐん上がっていきます。これであなたは太陽光発電所の所長。きちんと日々の発電量をチェックして、発電ライフを始めていきましょう!

    太陽光発電設備のメンテナンス方法

    太陽光発電は、設置してはい終わり!というものではありません。常に風雨に晒されているものですので、いつどのような問題が起こるかわかりません。異常が起きてもすぐ気がつけるよう日頃のチェックポイントを見ていきましょう。

    汚れやホコリが溜まると、太陽光発電の発電量は落ちてきます。外観のチェックは月に一度は行うと良いでしょう。

    常に汚れている場所はないか、傷やヒビはないかチェックしてみてください。とはいっても、実際に屋根に登って確認するのは危険ですのでオススメできません。遠目で目立つ異常がないか、チェックするだけになってしまうと思います。そこで実際に必要な日々のチェックは発電量のチェックになります。

    太陽光パネルそのものはさして劣化しなくても、接続部分やパワーコンディショナーなどは劣化し、発電量に影響をおよぼすことがあります。とはいっても天候に依存するものですので、週や月単位ではなく年間単位でなければ発電量の変化はわかりません。メーカーや販売店がそれぞれ様々な発電データ収集ツールを提供していますので、活用してみてください。

    故障かな、と思ったら業者や利用した見積もりサイトの担当者に連絡しましょう。その際には発電量の具体的な減少具合を伝えられると、対応がスムーズになるでしょう。

    メンテナンスの必要性と方法についてはコチラの記事で詳しくまとめています。あれ、おかしいな?とと思ったらこちらの記事もご覧下さい。

    発電量を保つには?太陽光発電システムのメンテナンス

    太陽光発電のまとめ

    太陽電池とはなに?から実際の導入まで、太陽光発電の全貌を駆け足で見てきました。太陽光発電がどういうものか、ある程度理解していただくことが出来たのではないかと思います。エコや省エネに絶対欠かすことのできない太陽光発電。ぜひ導入を前向きに検討してみてください!

    最後に大事なことをまとめますね。

    絶対に知っておいてほしいこと

    太陽光発電を設置することで、電気はどこか遠くから送られてくるものではなく、我々個人のこの手で作っていくものになります。電力小売完全自由化を始め、エネルギーを巡る状況が日に日に変化するなか、エネルギーに対して主体的に対応出来ることは損をしないためにとても大事なこと。太陽光発電は、あなたにこれからの省エネルギー社会への扉を開いてくれるに違いありません。