ツインリンクもてぎをカートで全開! 女子ジャーナリストが「K-TAI 2021」に参戦して感じたこと
カート初心者女子でも楽しめる「K-TAI」に参加してみた
2021年8月1日、ツインリンクもてぎで開催されたカートの耐久レース「2021 もてぎKART耐久フェスティバル“K-TAI”(以下K-TAI)」に、ドライバーとして参加した。そんな筆者は、カート初心者。K-TAIに参加するのは今年で3年目となるが、カートに乗った回数自体もほぼ同じくらいという経験値だ。 そんなカート初心者の私でも参加できてしまうのが、K-TAIの1番の魅力だと思う。しかも超初心者が、国際レーシングコースであるツインリンクもてぎの本コースを走れるという、かなり貴重な機会でもある。
そもそもK-TAIってどんなイベント?
K-TAIは、エンジンの排気量ごとにエントリー可能なクラスが分けられており、今回私が参加したのはクラス2。ホンダ製GX270、スバル製EX27、KX21、Robin製KX21R、BRIGGS&STRATTON製XR1450エンジンを搭載するクラスだ。そのなかで、私たちのカートにはホンダのGX270エンジンが搭載されていたが、そもそも草刈り機などにも使用されている4ストロークの汎用エンジンのため、ノーマルだと初心者にも扱えるレベルの程よいパワーが魅力となっている。 このほかにも、ホンダ製GX200、GX200SP、スバル製EX21、EIKO製EX21E、ヤマハ製MZ200、BRIGGS&STRATTON製206エンジン搭載カートで参加可能なクラス1や、ヤマハ製MX300RKC、BRIGGS&STRATTON製WORLD FORMULAエンジンで参加可能なクラス3。 さらに今年から新設された電気モーター、バッテリーによって駆動する電気カートが参加可能なクラスEからなる全4クラスが設定されており、それぞれのチームが、各クラスのレギュレーションに沿ったルーティーンでドライバー交代をしながら、7時間の周回数を競うのだ。
私が参加させてもらったのはメディア横断チームの「クラブレーシング」で、チームとしては4台を出走。私がドライブしたのは、ゼッケン96番の「クラブレーシング・ドゥ」だった。
ドライバー構成は同チームの事務局長で映像制作会社ピーディックの伊藤 毅さん、セキショウホンダの中島一樹さん、Auto Messe Webの加藤さん、そして私、先川の計4人。チーム監督は、山崎憲治さんだ。 今回、自分に課した目標は「チェッカーを受けるまでスピンをせずに、無事次のドライバーにマシンをバトンタッチする」こと。目標の低さに驚いた人もいると思うが、これが意外に難しいのである。
バイクとは異なるコーナリング時の「重心のかけ方」
カートをスピンさせない走り方は、アクセル、ブレーキ、ステアリング操作を同時にしないこと。急ブレーキをかけないこと。そんな、どこかで聞いたうる覚えの記憶を、必死で心がけながら4.801kmのもてぎのフルコースを夢中で走るも、周りとの速度差があり過ぎて、集団に抜かれるたびに、恐怖を感じてしまう。 速度差の理由は、コーナーごとに速度を落とし過ぎていることであると自分でも明確に理解はしているのだが、スピンを恐れるあまり、どうしてもハイスピードのままコーナーに進入できないのだ。 当たり前だが、カートにはパワステもABSも付いていない。それだけなのに、排気量にして約300cc程度の4輪車を操ることが、こんなにも難しいのかと。1回目のスティントは、ただただサインボードに「PIT IN」の表示がでるまで、必死で周回をしたという記憶だけが残っている。 なんとか無事にピットに戻ると、そんなコース上での私のヤバすぎる走りを見ていたチームの先輩が、「コーナーで体が内側に傾きすぎてる。その姿勢を直すだけでだいぶ速くなよ」とアドバイスをくれた。確かにコーナリングでは「曲がれ~!」と全身全霊で曲がりたい方向に重心をかけていて、ほかのドライバーよりかなり自分の体が傾いている自覚はあった。それは、以前から趣味でサーキットを走っている、バイクでのコーナリングの経験から来るものだった。「そうか、コーナリングでの重心のかけ方は、バイクとカートでは違うのか」そこから、頭はセンター固定で重心は外側にすることをコーナーごとに意識をしてバイクの癖を修正。すると、周回を重ねるごとに1秒、2秒とラップタイムが縮まっていき、最終的には約12秒も短縮することに成功したのである。しかも、全体的なスピードのアベレージは上がっているはずなのに、恐怖心は減少するという不思議な感覚を感じることができた。 バイクはタイヤが2つしか付いていないから、曲がりたい方向にトラクションをかけて、タイヤと地面の接地面積を増やしながらコーナリングをすると、安定して曲がることができる。だがカートは、コーナーの内側になるタイヤのグリップ力をトラクションをかけて増やしてしまうと、外側2輪がグリップを失うような不安定な感覚に襲われ、恐怖を感じることになるのだ。 だから、トラクションをかけるのはアウト側。バイクとカートでは単純に、自分の体を使ってトラクションをかける方向が逆だったのだ。そしてその事実を知ることができただけで、コース上を走行している際に感じていた、速い集団に抜かれる時の恐怖を一気に減らすことができた。 気が付けば、自分なりにブレーキングポイントやアクセルを踏んでいくポイント、走行ラインなどを工夫しながらタイムアタックをする余裕まで、できていた。
いくら、初心者でも参加しやすいレギュレーションが考えられていても、それぞれの乗り物の基本的な走り方を知らなければ、危険度は増してしまう。操作の基本を知っているということは、安全性を担保するためにも必要なことなのだ。そこを、チーム単位なのか、主催者単位なのかで考えることができれば、K-TAIはさらに参加者全員が楽しめるイベントとなるのではないだろうか。
「K-TAIが初心者に優しい」と感じたポイント
初心者でも参加可能と謳っている耐久レースは多々あるが、基本的な耐久レースのレギュレーションでは、マシンを自力でピットに戻せない場合は、そのままリタイアとなることが多い。だがK-TAIはコース上で止まってしまった車両を直ちに回収する「救済措置」があるため、再スタートを切ることができるのだ。 このルールがあるからこそ、初心者が参加できるといっても過言ではない。なぜなら私自身、K-TAIに初めて参加した際に知ったことなのだが、カートは驚くほど簡単にスピンしてしまう乗り物なのである。そのため、初心者がスピンしてエンストしたり、コースアウトをする可能性は高い。その心配がこのルールによって軽減され、チーム自体もカート初心者を誘いやすくなっていることは間違いないだろう。
コロナ禍での開催だったが、チームとしての感染対策はバッチリ
K-TAIにはレース以外の楽しみもある。それは、集まったチームメンバーでの交流の時間だ。自分が走っていない時間は、サインエリアでチームメイトのためにサインボードを出したり、ピット裏に用意された休憩スペースで、普段はなかなか会うことができないチームメンバーや参加者同士が交流を深められるタイミングが持てる点も魅力的なポイントとなっている。 真夏のコロナ禍ということもあり、私が参加したクラブレーシングでも、マスクをつねに着用。さらに弱酸性次亜塩素酸水の「サラウォーター」で作ったドリンク用のドブ漬けを作るなど、徹底した感染予防対策と熱中症対策が行われ、快適な空間でのメンバー内での楽しい時間を過ごすことができた。 暑さ対策としては、今回ホンダの発電機(EU18i)を持ち込み、スポットクーラーを稼働させた。参加を考えている人は、こういった冷房設備を用意することを、おススメする。
なんとか無事にチェッカー! 目標は達成できた?
ちなみに、「チェッカーを受けるまでスピンをせずに無事、次のドライバーと交代すること」という目標を達成できたのかというと、結果は未達成。じつは周回を重ねるごとに縮まっていくラップタイムが嬉しくて夢中になってしまい、最終ラップでスピンをしてしまったのだ。幸い後続車がうまく避けてくれたことと、チェッカードライバーだったため、その後の交代は不要だったことで、とりあえずは良しとしよう。 そしてもうひとつ、今回の参加で気付いたことがあった。それはチェッカー後のクールダウンラップの難しさだ。約4.8kmという長いレーシングコースで、隊列を組みながら急に前を走るカートの速度が上がったとかと思えば、渋滞のような状態が起こって急減速をする。アクセルとブレーキのみで何の電子制御も付いていないカートを操縦しながら、そんなランダムなストップ&ゴーを繰り返すことが、予想外に難しかったのだ。 レース中には1度もなかった、前のカートの急減速を避け切れず、追突を回避するために2度ほどグラベルに自ら飛び出してことなきを得るなど、これはこれでいい経験になったと思う。
大人でも楽しめる「運動会」のようなイベント
チームメンバーみんなで7時間後のチェッカーを目指す楽しさや、チェッカーを受けたあとの達成感、カートでタイムアタックをすることで普段運転しているクルマの安全装備の性能の凄さを体感できること。そして何より大人になると忘れがちになってしまう、みんなで何かをやり遂げる楽しさを思い出させてくれるK-TAIは、大人でも無邪気に楽しめる運動会のようなイベントなのである。※編集部注:本文中、撮影のために一部写真でマスクを外しています
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