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『EQA』長距離実走レポート【復路編】実家にEV充電用コンセント付けちゃいました

『EQA』長距離実走レポート【復路編】実家にEV充電用コンセント付けちゃいました

復路も90kW器を1台で使えるのか?

【往路編】のレポートで紹介したように、今回の東京→兵庫、約620kmは90kW器ひとりじめの急速充電2回で余裕の完走でした。2回の急速充電スポット、そしてゴールまで、いずれも30%以上のSOC(電池残量)で到達できる『EQA』のグランドツアラーとしての実力を実感することができました。

享受できる出力や電力量の数値はテスラ車(現状ではモデル3ロングレンジおよびパフォーマンス)&テスラスーパーチャージャー(V3)が最強ではありますが、高速道路SAPAに「いい塩梅」の間隔で出力90kWオーバーの急速充電スポットがあれば(なおかつバッテリー容量50kWh以上でしっかり200km以上の航続距離があって、100kWクラス以上の超急速充電可能なEVならば)、電気自動車の長距離ドライブはガソリン車と比べて不便でも何でもありません。

ただし、往路では2カ所のPAで90kW「2本出し」の急速充電器をEQA1台だけで30分間ひとりじめできる好運に恵まれました。コロナ禍とはいえお盆の時期、はたして、復路も90kW出力2回の急速充電で走りきれるのかどうか。復路の出発は8月13日、少しでも渋滞の懸念を避けるべく、往路と同じ午後11時ごろに実家を出発しました。

結果は「ワンダフル!」でした

滋賀県の草津PAを利用するのは往路と同じ。静岡〜愛知県あたりでの充電&休憩ポイントは、往路では愛知県の長篠設楽原PAでしたが、上り線は静岡県に入ってからの遠州森町PAになります。

順に経過を紹介します。

23:05、SOC100%で自宅を出発。往路で撮影し損ねた満充電時の航続距離。メーターには406kmと表示されています。

一点、充電結果とは関係ないですが、気付いたことをひとつ挙げておきます。EQAは往路復路とも、車載ナビで経路を設定すると、充電スポットを「提案」してくれました。復路スタート直後のナビ画面では「349km先の愛知県新城市内の充電スポットに39%残して到着。22分間で61%まで充電すると、10%残して東京に到着できる」と案内しています。

おすすめ充電スポットの詳細はよくわかりませんでしたが、どうやら一般道上にあり。そもそも、349km先の新城市内に39%残で到着するとも思えません。いろいろと「あり得ない」充電計画だったので、往復ともにEQAからの提案は無視して走りました。

ほかにも、走行中のメーターやナビ画面では電池残量がガソリンメーターみたいな4分割のアナログ表示しかなくて正確なSOCがわからない、とか。メーター表示の機能は多彩でしたが、瞬間的な出力をモニターする表示がよくわからなかったり、などなど、あまりしっくりくる表示を見出すことができませんでした。私が使いこなせていないだけかも知れないですが、さしものメルセデス・ベンツといえどもEQAのインターフェースはまだまだ「エンジン車のついで」線上にある印象です。このあたりは、グランドアップで設計されているはずの『EQS』に、そしてその後から繰り出されるEV新車種への反映に期待したいところです。

ちなみに象徴的な一例として挙げておくと、テスラモデル3では、ナビでルートを設定すると高低差まで考慮したかなり正確な残量予測グラフが簡単な操作で表示できます。

私が知る限り、ルートの高低差を考慮した航続可能距離を表示してくれるのはテスラだけ。なぜ、他メーカーが追随しないのか謎ですらあります。日産アリアにはこの機能があることを期待しているのですが、まだ未確認です。

01:13,SOC45%で草津PAに到着。

EQAの急速充電口は右側後方。ケーブルがちゃんと届くかどうか確かめたかったので、あえて右側区画に停めてみました。

少しは余裕を残して届きます。ただ、90kW器のケーブルは50kW器と比べても太いので、とくにこんな雨の日に、長い距離を引き回すのはちょっと面倒ではありました。

QC口が左フロント寄りにあるジャガーのアイペイスで左区画だと、枠はみ出すかバックで停めないと厳しそうです。

30分で36.3kWh、SOCは96%まで回復しました。ワンダフルです。

03:53、SOC33%で遠州森町PA(上り線)に到着。コンビニスタイルの売店が深夜でも営業していた長篠設楽原PAの下り線とは違い、売店などは閉まってました。

2台分の充電スペースと、2台分の待機スペースが設けられています。

結局、今回は往復ともに、急速充電器でほかのEVやPHEVと遭遇することはありませんでした。

充電の結果は文句なし。計ったようにまたまた38.1kWh充電できました。

6:32、東京ICを下りたところで路肩に寄せて。SOC24%、残航続距離表示90kmで、兵庫→東京を完走できました。所要時間は往路とまったく同じ、約7時間半でした。深夜から早朝の走りとはいえ、1mの渋滞もありませんでした。

『EQA』長距離実走レポート【復路編】実家にEV充電用コンセント付けちゃいました

そのまま自宅に戻って爆睡してもよかったのですが、往路と同じく、オマケの急速充電を試してみました。往路の道の駅は25kW器だったので、復路のオマケは東京IC近くの三菱ディーラーの50kW器へ。

三菱ディーラーにはハセテックのQC器、というイメージがあったのですが、ここのマシンはJFEの蓄電式、大容量EVで充電すると20分を過ぎて自動停止する例のヤツに変わっていました。

そういえば、三菱販売店がJFEに置き換えを、という情報を小耳に挟んだことがあったような気がします。

20分経過したので張り付いていたら、24分過ぎ、上の写真を撮った直後にやはり自動停止しました。ともあれ、24分間の充電で、EQA側のSOC表示は48%になりました。

往路と復路、合計6回の急速充電データをまとめておきます。

日時場所到着時SOCQC出力充電時間充電量(充電器表示)終了後SOC実充電量(推定)
8/12 01:45長篠設楽原PA下り33%90kW30分38.1kWh87%約35.9kWh
8/12 04:00草津PA下り37%90kW30分38kWh91%約35.9kWh
8/12 06:30道の駅ようか但馬蔵35%25kW30分10.91kWh50%約10kWh
8/14 01:13草津PA上り45%90kW30分36.3kWh96%約33.9kWh
8/14 3:53遠州森町PA上り33%90kW30分38.1kWh88%約36.6kWh
8/14 6:42東日本三菱自動車販売世田谷店24%50kW24分(目測)不明48%約16kWh

「90kW器(高出力)ひとりじめ」のありがたさが際立つ一方で、EVの急速充電性能とは、急速充電インフラの性能でもあることがよくわかります。

3万円ちょっとで実家にコンセントを設置

さて、今回の「復路編」最大のトピックは急速充電結果ではありません。実は、実家へ旅立つ前日、私はひとつの決意を固め、幼なじみで2こ上の先輩でもある『山根電工』の克己君に連絡を取っていました。奥さんの富美子さん(ふーさん)は、私と中学時代の同級生でLINEやFacebookでも繋がっているので、ふーさんにLINE通話して「12日にEV用コンセント付けてもらえないか」とお願いしたのです。

急なことで、EV用コンセントのパーツ取り寄せが間に合わないかなぁと心配したのですが、「それがまあ、うまいこと在庫があるがな」と克己君。お盆休みの急なお願いを詫びると「かわいい後輩のお願いならしゃあないがな」と。

道の駅でオマケ充電を終えて実家に入り「関宮到着」とLINEを入れると、すぐに「8時過ぎに行くっていうてるわ」と返事があり。

やや雨模様の空の下、克己君が工事に来てくれました。

2012年に散髪屋さんだった親父が亡くなってからもそのままになっている店の脇の壁にコンセントを設置しました。母屋の配電盤から駐車場に面した壁まで配線するとなると、配線の長さや工事も結構大変で「10万とか掛かっちゃうかもなぁ」と覚悟を決めてはいたのですが。

ちょうどコンセントを付けたい壁のすぐそばにあった、店用エアコン(今はもう使っていない)の200V配線を活用してもらうことができました。配電盤のブレーカーも分かれているので、私の帰省時以外はブレーカーを落としておけるラッキー仕様です。

ちょうどいいところにアースを取れる土の地面まであって。工事は2時間くらいで完了。その後、改造Zで鈴鹿とかにも挑んでたはず(高校卒業後郷里を離れた私はあまり詳しく知らないんですが)の克己君にもEQAを試乗してもらい、近所(といっても3kmほど離れてます)のファミマのイートインコーナーでレーコーをしばき。

後日、ふーさんに送ってもらった請求書は、税込み3万4199円でした。克己君、ふーさん、ありがとうございました!

工事を見学しつつ克己君に聞いた話では、4つの町が合併した養父市で2万2000人弱ぽっちの人口も堅調に減り続けている私の郷里=田舎ではありますが、EV用コンセント設置の注文はちょこちょこあって。ただし、EVよりもプリウスのPHEV(車名はPHV)が多いそうです。冬は雪が激しい地域でもあるので、克己君も「アウトランダーのPHEVがええけど、ほんまに日本車か? いうような値段やしけえな」と、もっと買いやすい値段の電動車が登場することを心待ちにしている様子でした。

養父市内、いや、兵庫北部の但馬界隈でEV用コンセントや充電設備設置を検討しているみなさん、ぜひ、中瀬の『山根電工』をよろしくお願いします!(ちょっと切ないくらいターゲットが狭い宣伝ですけど……)

実家にコンセントを設置して感じたこと

当たり前の話をします。実家にEV用200Vコンセントを付けてみて、それはそれは便利になりました。今回は13日に高校剣道部OB会のゴルフコンペが予定されていて。ところが豪雨予報でコンペは中止。気心知れた2人の後輩とともに雨中ゴルフを決行しただけ(今年は恒例の恩師宅での飲み会も中止)で、その日の夜には東京へ戻るという短期滞在ではあったのですが、充電のレポートで紹介したように、復路出発時はSOC100%、満充電でスタートすることができました。

13日は前夜のうちに満充電。ゴルフを終えて戻った時は70%台になっていましたが、23時の出発まで、仮眠している間に満充電に復活しました。

今まで、いろんなEVで実家へ帰省した時には、国道9号線で東西それぞれ10kmほど走った先にある道の駅『ようか但馬蔵』や向かいのファミマにある25kW器か、JFEの50kW器がある道の駅『村岡ファームガーデン』まで、わざわざランチ食べに出かけたりしながら、ちまちまとQCを繰り返すしかありませんでした。

実家に200Vコンセントを設置してみて、ああ、電気自動車はやっぱり自宅充電が便利だぁという当たり前のことを実感しています。

私が初めて電気自動車で実家へ帰省したのは、2012年、i-MiEVで16時間かけて走った時だったと記憶しています。当時はまだ東名高速の急速充電器にも大きな隙間があって、岡崎市あたりでは一度高速を下りて充電しなければいけなくて、京都からは道の駅などで充電スポットが繋がっていた国道9号線を走りました。

それから、ほぼ年に1回、いろんなEVで実家に戻る度に「いい加減、実家にもコンセント付けなきゃ」と思ってはいたのです。でも、年に1度、数日間しか滞在しない実家に、わざわざお金を掛けてコンセントを設置する決断ができませんでした。

今回、設置を決意したのは、いろんな記事で「急速充電インフラの高出力複数台設置促進を!」とか、「宿泊施設の充電設備はウオッシュレットのように当たり前に!」などと社会のEVシフトを呼びかけておきながら、自らの実家にすらコンセントがないのはいかがなものか、という焦燥を感じたからです。

自分で、実家コンセントを設置してみてわかりました。社会のEVシフトって、こういう「小さな決断」の積み重ねなんだと思います。少なくとも私の実家では、今はエンジン車に乗っている弟が、いつEVに乗り換えても大丈夫、になりました。

たとえば、都市部では集合住宅の駐車場に充電設備を付けるのが難しいとよく言われます。EVsmartブログに寄稿いただいているジャーナリストの塩見さんもそのひとり。著者プロフィールには「自宅マンションが駐車場を修繕するというので各区画への普通充電設備の導入を進言したところ、時期尚早という返答」だったことが紹介されています。

改めて電話して少し事情を確認すると、塩見さんの住まいは大規模なマンションで自治体(管理組合)の合意を取り付けづらいとのこと。とはいえ「普通充電設備の導入」について、自ら方法や費用を調べたり、提案するまでのことはできていない、そうです。

塩見さんがどうこうではありません。高速道路SAPAの施設ご担当者や宿泊施設の経営者、まだ自宅ガレージにEV用充電設備がない方など、世の中の大多数の人たちが、EVシフトを当然の前提として「小さな決断」を積み重ねていくことで、日本でもEVがどんどん使いやすい乗り物になっていくんだなぁ、と感慨にも似た気付きを感じているところ、というお話しでした。

問題はコンセント設置だけではないでしょう。EVシフトに向けて決断を悩むたくさんのみなさんに呼びかけておきます。一緒に、一歩を踏み出しましょう!