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「絶対匿名に」ドコモ・KDDI・ソフトバンクは裸の王様

「絶対匿名に」ドコモ・KDDI・ソフトバンクは裸の王様

 「絶対匿名にしてほしい。店舗が特定されるような書き方もNGだ」ーー。

 日経クロステックは今回、多くの携帯ショップを取材したが、そのほぼすべてが絶対匿名を条件に応じたものだった。現場の不満の声が続々と寄せられたものの、携帯大手を極度に恐れ、匿名でしか反論できない携帯ショップの立場に、問題の本質が垣間見える。面と向かって意見できない携帯ショップが携帯大手を「裸の王様」にし、販売現場の問題解決を遠ざけていないか。

生殺与奪権を握る携帯大手

 「この業界は携帯キャリアが圧倒的に強い」ーー。冒頭の携帯ショップオーナーはつぶやくように語る。

「絶対匿名に」ドコモ・KDDI・ソフトバンクは裸の王様

 全国に「ドコモショップ」や「auショップ」といった携帯大手のブランドを冠した携帯ショップは約8000店舗あり、その99%は販売代理店が運営している。業界団体である全国携帯電話販売代理店協会によると、こうした販売代理店の8割が1社10店舗未満の中小地場企業だ。5%以下の営業利益率で推移している企業も多く、薄利な業界構造になっている。

 一方のNTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手は、日本のトップ10に入るような収益規模を誇る大企業であり、営業利益率も20%前後と、日本の全産業の中でも極めて高い部類に入る。

 企業規模の圧倒的な差に加え、販売代理店は携帯大手からビジネスを委託されるという点でも、取引上の弱い立場になる。評価指標や手数料体系に不満を持ちつつ、生殺与奪権を握る携帯大手に対して面と向かって意見できず、匿名アンケートなどでしか反論できないーー。そんな問題の構図が浮かび上がる。

 公正取引委員会は21年6月、携帯大手(MNO)と販売代理店の競争政策上の課題について、「MNOが(中略)、その地位を利用して、販売代理店によるサービスを的確に実施するために必要な限度を超えて、販売代理店と契約条件に係る交渉を十分に行うことなく契約内容を一方的に変更すること等によって、販売代理店に対し不利益を与える場合には、独占禁止法上問題となるおそれ」と指摘した。つまり、携帯大手が販売代理店と十分に対話することなく、評価指標などの条件を一方的に変えた場合、独占禁止法上の優越的地位の乱用に当たるおそれがあるということだ。

ソフトバンクは匿名目安箱を設置

 携帯大手は販売代理店と十分に対話できているのか。携帯大手はその優越的な地位を乱用して、販売代理店に無理な契約条件を飲ませていないか。そんな疑問に対して、携帯大手の担当者は次のように反論する。